出版社内容情報
18年前に起きたカルト教団《アルパートンの天使》集団自殺事件の謎……犯罪ノンフィクション作家がつかんだ、衝撃の真相とは!?
内容説明
2003年、ロンドン北西部の廃倉庫で、自分たちは人間の姿をした天使だと信じるカルト教団“アルパートンの天使”信者数人の凄惨な遺体が見つかった。指導者の自称・大天使ガブリエルは逮捕され、現場で保護された17歳の男女と生後まもない乳児のその後は不明…。事件から18年、巧妙に隠蔽されてきた不都合な真相を、犯罪ノンフィクション作家の「取材記録」があぶり出す。圧巻のミステリー!
著者等紹介
ハレット,ジャニス[ハレット,ジャニス] [Hallett,Janice]
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで英語を学び、雑誌編集者、ジャーナリスト、内閣や省庁の文書・スピーチのライターを経て、劇作家、脚本家として活躍。映画『リトリート・アイランド』(2011)をはじめ、数多くの映画、舞台作品、テレビ番組の脚本を手がける。2014年に英国インディペンデント映画祭で最優秀新人脚本賞を受賞。2022年に小説デビュー作『ポピーのためにできること』がCWA賞(英国推理作家協会賞)ジョン・クリーシー・ダガーを受賞。現在、西ロンドンに在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
83
前作「ポピーのために~」と同じくメールやチャット、取材テープなどだけで物語が進む独特の構成。ノンフィクション作家のアマンダが取り上げる事になったのは18年前の謎多き事件『アルパートンの天使たち』自分を天使だと言うカルト教団の信者達の凄惨な死体が見つかり、現場で保護されたのは17歳の男女と乳児だけという悲劇。この生き残りの消息を探して取材を進めるうちに飛び出す意外な事実や証言の食い違い。そしてアマンダの周囲で連続する取材対象者の死は本当に事故なのか?疑惑が焦点を結ぶ驚きのラストまで読み応えたっぷりの1冊。2025/01/08
M H
24
「ポピーのためにできること」作者によるチャットや記事で構成された小説。カルト教団の集団自殺事件を調査していく仕立てで、難しいことは書かれていなくても独特の読みづらさがある。700ページを超えるボリュームだけあって進行も早くはなく、事務的なやりとりが続くとげんなりしてくる。結末のインパクトはポピーよりあるし、この形式も良いと思うもののしんどさが否めない。怖い話ではある。2025/01/30
まぶぜたろう
22
群像劇であった前作とは異なり、本作は主人公の行動を追っていく構成。だから読みやすく、登場人物の多さやページ数にも関わらず、リーダビリティは抜群。メールやSNSのやり取りだけの曖昧な叙述も不気味な雰囲気を醸し出す。前作は結末がやや平凡だったのだが、本作はモキュメンタリー系ホラーから転じ、見事な着地をみせる。しかし読んでて何か虚しい。真相が複雑で作りものめき、それが解る過程が、ど〜も誤魔化されてる感じがするのだが、どうか。本作の方が面白いとはいえ、のんびりユーモラスな前作の方が私は好きでした。(◯◯◯●●●)2025/03/03
おうつき
22
前作「ポピーのためにできること」同様、SNSやメールのやり取り、記事や録音の書き起こしのみによってストーリーが進行していくミステリ。かつて起きたカルト教団の信者の死と、生き残った関係者を探すという物語なのだが、途中何度も背筋が凍るような展開が訪れる。表面上のやり取りでは見えないその人の本音が垣間見える瞬間にゾクリとさせられた。食い違う証言や不可解な出来事を経て辿り着く終盤の伏線回収がとても綺麗だった。風呂敷を広げすぎているような気がしたので不安になったが、最終的にはきちんとまとまっている。前作を凌ぐ傑作。2024/11/26
本の蟲
20
自分たちは天使だと信じこんだカルトの集団自殺、通称〈アルパートンの天使〉事件。犯罪ノンフィクション作家アマンダは、数多の創作物の題材にもなったこの事件を書くために調査を始めるが…。作者前作『ポピーのためにできること』と同様、メール、チャット、記録、インタビューの文字起こし等で構成されていて、地の文が一切ない。取材対象は幅広く、友人の愚痴、ネットニュースからスピリチュアル系の勧誘メールまで入り乱れる文面は雑多だが臨場感があり、本筋を追うのも難しくない。思いもよらぬ結末で洗脳と妄信おそろしや。大変面白く読めた2025/01/23