出版社内容情報
パリ郊外の城に滞在する作家が見た、18世紀の騎士とさる夫人の一夜の逢瀬と、20世紀末の自意識過剰な茶番劇。待望の文庫化!
内容説明
20世紀末。パリ郊外の城に滞在するため車を走らせるクンデラ夫妻。速さに取りつかれた周囲の車は、まるで猛禽のようだ。クンデラは、18世紀の小説に描かれた、ある貴婦人と騎士が城に向かう馬車の旅、そしてその夜の逢瀬に思いを馳せる。一方、城では昆虫学会が開催されていて―。ふたつの世紀のヨーロッパの精神を、かろやかに、優雅に、哲学的に描く、クンデラ初のフランス語執筆による小説。
著者等紹介
クンデラ,ミラン[クンデラ,ミラン] [Kundera,Milan]
チェコ共和国生まれ。1975年よりフランスに住む。2023年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふみふみ
15
前半はクンデラさんらしいペダンチック臭漂うエッセー風エソードの連続で、後半は城のレセプションホールを舞台に学者たちのスペキュレイティブ喜劇と言うのかソープオペラ(シットコム)が繰り広げられます。このドタバタがとてもシュールな構図で笑えますし、ペニスが喋り出したり、18世紀の小説と物語が交わったりとマジックリアリズムっぽさも醸し出してます。本書のモチーフ、緩やかな快楽主義へのオマージュはいまいちピンときませんが、小説としては十分面白いですね。2024/07/16
mtht
7
読了。話の筋が難しくてモチーフである"緩やかさ"を掴むのも難しいと思ったが、それを含めてこの小説の面白いところでもあると思うし、あの一節は自己言及だったんだなと思えるところがあり、それでこの話を納得しました。2024/06/28
イコ
4
ある城にクンデラと、クンデラが思い出しているある小説のキャラと、同時代にいるある人が、時間の枠を壊しつつほぼ同時に語られる。目立ちたがり屋ついて分かったようで分からないような、笑える内容にしては難しい。2024/10/13
ぴの
4
「人が速さを好むのは忘却を望むため、緩やかさを好むのは余韻を味わうため」といった趣旨のことが書いてあって、あるピアニストが「ゆっくり練習すれば忘れるのもゆっくりになる」と言っていたのを思い出した。確かに受験勉強で詰め込んだ知識は忘れるのも一瞬だった…。2024/08/12
たけし
3
短い喜劇。クンデラらしい登場人物が入れ替わり、今回は時代も入れ替わる。しかし、悲壮感はなく、軽く仕上がり。速さは忘却を求めるから。もはや余韻など欲しくなく、皆んなに忘れ去られたいから、耐え難い自分自身を忘れ去りたいから、速く動くのだという。なるほど、そんなところはあるかもしれない。忘れたくないようなひと時など日常にそうあるものでなく、それらもあっという間に過ぎていく。次にそれが来るのが待ちきれないから、また速く動いていく。そんな感じか。2024/11/17