出版社内容情報
ベルリン陥落。占領するソ連軍将校に、ユダヤ人元刑事オッペンハイマーは、ナチスの原爆開発資料の捜索を命令される。一方、妻を蹂躙したソ連脱走兵への復讐に燃える彼だったが……。(解説/堂場瞬一)
ハラルト・ギルバース[ハラルトギルバース]
著・文・その他
酒寄 進一[サカヨリシンイチ]
翻訳
内容説明
1945年5月、ベルリン陥落。焦土と化した街をソ連軍が占領した。そんな中、ユダヤ人元刑事オッペンハイマーは、ソ連軍大佐の密命を受ける―ナチスの原爆開発に関わる資料を捜し出せ、と。一方、横行闊歩のソ連兵は、オッペンハイマーの妻リザをレイプ。それを知った彼は、相手への復讐の念に駆られるのだった。絶望の先に何があるのか?劇的な展開のシリーズ、クライマックス!
著者等紹介
ギルバース,ハラルト[ギルバース,ハラルト] [Gilbers,Harald]
1969年生まれ。ドイツのアウグスブルクとミュンヘンの大学で、英文学と歴史学を学ぶ。その後テレビ局で文芸部編集部員として勤務。現在はフリーの舞台監督として活動している。ミュンヘン近郊のエアディング在住。デビュー作『ゲルマニア』で、2014年フリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)新人賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
123
この著者によるベルリン三部作のうちの最後の本です。もとユダヤ人刑事が1945年のロシア進駐時のベルリンでの自分にかかわる出来事あるいはギャングとの抗争などに巻き込まれたりした話です。今回はソ連軍の管理下という状況での話でやはりドイツ人らしくみっちりとした構成で当時のベルリンやそこにいる人々の生活事情などがよくわかりました。解説が私が愛読している堂場瞬一さんでかれの最近の作品の「焦土の刑事」という作品も読みたくなりました。2019/01/02
ばんだねいっぺい
34
ゲルマニア、オーディンの末裔と来て、終焉。小説中の「もう、変化は十分だ!」は、今の自分にとてもよく響いた。ベルリンの街にナチスが去ってもソ連兵がやって来る。その緊張感たるや、神経がすりきれる日々だろう。 そのなかに悲劇が起き、不器用ながらもそれぞれの方法で立ち向かう物語だった。2020/04/23
星落秋風五丈原
26
本書は【炎】【灰】【光】の三章構成。炎で人も建物も焼かれて、全てが灰になる。しかしその後には光がある、と読み解ける。これから膨大な賠償金を支払い、ベルリンさえ分割されるのに、どこに光=希望があるのか、と思うかもしれない。希望の鍵は、女性たちが握っていた。戦争で最も標的にされず、力も弱い女性達が、辛い過去をひきずりながらも立ち上がる力を持っていた。本編ラストでは日本に起こったある出来事がドイツに知らされる。戦争が終われば再び戦争を始めずにはいられないのが男達。しかし瓦礫の中から新たな光を見つけ出すのは女達。2019/01/03
tom
17
シリーズ最終巻。主人公のオッペンハイマーは、妻を強姦したならず者を追いかける。同時並行して核爆弾の材料の捜索。あれやこれやが入り混じって終結に至る。シリーズの中では、もっとも緊張感が乏しい印象。ドイツでの戦争が終わり、それまでのいつ死んでしまうか分からない状況ではなくなってしまったのだから、当然のことかもしれない。いずれにしても、読み応えのあるシリーズでした。2019/04/08
maja
17
ユダヤ人元刑事のシリーズ3作目。1945年大戦終戦時のベルリン。ドイツ敗戦でナチスの脅威はなくなったがソ連の脅威が押し寄せる市井の情況など雰囲気がよく伝わって来る。ソ連側にもアメリカ側にも都合よく使われ、胸の内は妻を守れなかった事で忸怩たる思いを持ちながら、生き延びるために巧みに駆け引きしてオッペンハイマーは奮闘する。ナチス侵攻のパリ陥落時、ナチスから重水の入ったカバンを守りイギリスに渡る教授の仏映画を思い出す。 2018/09/18