出版社内容情報
過去・現在・未来、時空を超え、“あり得たかもしれない"人生を生き直す女サリーと、サリーに魅せられる男たち。壮大なヴィジョンで描かれる、愛と快楽、自由と隷属を巡る、濃密で哀切なラヴストーリー。
内容説明
フランス革命直前のパリ。アメリカ独立宣言起草者として名高いトマス・ジェファソンは、自らの美しき女奴隷で愛人のサリーを連れて帰国しようとする。トマスとともにアメリカに帰り、再び彼の奴隷になるか、パリに残って自由人の黒人でい続けるか。サリーの決断により、愛と快楽、自由と隷属をめぐる、時空を超えた目くるめく物語が幕を開ける…現代アメリカ文学最重要作家の超弩級の傑作!
著者等紹介
エリクソン,スティーヴ[エリクソン,スティーヴ] [Erickson,Steve]
1950年ロサンゼルス生まれ。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)卒業後、ニューヨーク、パリ、ローマ、アムステルダムと転々と住む。ニューヨーク・タイムズ紙やエスクァイア、ローリングストーンなどの雑誌に寄稿したり映画評を書いたりする傍ら、1985年以降、小説を執筆。現在までに小説9作、ノンフィクション2作を上梓。また、カリフォルニア芸術大学などで教鞭をとり、文芸誌Black Clockの編集長も務めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
三柴ゆよし
25
エリクソンは常に妄想としてのアメリカを描く作家である。エリクソンは常に空白の都市たるロサンゼルスを描く作家である。エリクソンは常に移動を描く作家である。そしてこの『Xのアーチ』において、エリクソンはペルソナ殺しの作家となった。本作は先行するエリクソン作品の集大成であると同時に、これ以前の作品では錯乱する物語の背後に息を潜め、その姿を辛くも隠しおおせていた作者自身を、ついに読者の眼前にひきずり出し抹殺するという、次作『アムニジア・スコープ』にも継承される彼流のペルソナ殺しを、はじめて成就させた記念碑である。2016/03/24
おおた
19
『黒い時計の旅』以来のエリクソンは、こんなに読みづらい作家だったっけ? と、寒々しい長い帰り道をとぼとぼ歩いているような読書だった。ほぼ三人称でありながらとにかく世界が狭っ苦しくて、登場人物しかいないように感じられ、これが世界系かとも思う。なんでも性交に結びつけるマッチョなところも読んでいてうんざり。トマス・ジェファソンの過去パートはともかく、SFパートですら痴情のもつれや突発的な激情ばかりで、マルクス・アウレリウスの爪の垢でも煎じて飲んでくれ。愚かな人たちをそのままに受け止められる人には勧められるかも。2016/02/28
こうすけ
18
ポストモダン文学を読みたくなり、「ピンチョン絶賛!」というのに惹かれて読むことに。たしかに、時空が乱れて色々な物語が錯綜し、ピンチョンっぽいのだが、しかしそれにしても読みづらい。というか、寄り道の面白さがない。シンプルなトマスとサリーの話はよかったのに。2024/10/16
かりあ
10
すごかった…。ただただ圧倒されて、感想をどう書いていいのかめちゃくちゃ悩んでしまったけど、とりあえずアップ…。https://www.kariabookdiary.jp/entry/2018/11/07/1121362018/11/07
河内 タッキー
10
エリクソンの小説を幻視とか形容される。まるでドラッグでトリップしたのか、精神疾患で尋常ではない状態で書いたかのように誤解しがちだが、そんなことはない。ある登場人物が次の瞬間には(同じキャラクターのまま)別の人物になり、さらに関係する人物も、関係はそのままでやはり別の人物となり、さらに時代も平気で飛び越える、四次元的な表現だ。幻視と表現すると、何かわざとらしい、あざとさを感じるが、そうではなく、物語の悲痛さを深める独特な表現だ。最後の文は暗く、悲しく、感動的だ。2016/03/29
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