内容説明
謎の作家フリアン・カラックスの過去が明らかになるにつれて、ダニエルの身に危険が迫る。一方、彼は作家の生涯と自分の現在との不思議な照応に気づいていくのだが…。ガウディ、ミロ、ダリなど幾多の天才児たちを産んだカタルーニャの首都バルセロナの魂の奥深くを巡る冒険の行方には、思いがけない結末が待っている。文学と読書愛好家への熱いオマージュを捧げる本格ミステリーロマン。
著者等紹介
サフォン,カルロス・ルイス[サフォン,カルロスルイス][Zaf´on,Carlos Ruiz]
1964年、スペインのバルセロナ生まれ、ロサンゼルス在住。執筆活動のほか、フリーランスの脚本家としても活躍。1993年のデビュー作『霧の王子(El Principe de la Niebla)』で、エデベ賞を受賞。5作目の『風の影』でフェルナンド・ララ小説賞準賞(2001年)、リブレテール賞(2002年)、バングアルディア紙読者賞(2002年)を受賞
木村裕美[キムラヒロミ]
東京生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。翻訳家、マドリード在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
354
この小説はいくつもの相貌を持っている。最もわかりやすいものとして、まずはダニエルの成長物語という相。そして、ダニエルとベアトリスの恋愛を中心としたいくつかの恋の物語。もちろん、そこには過去のフリアンの物語が大きな影を落としている。フリアンとダニエルの生きた2つの時代は互いに侵食しあうことで、内戦の時代を甦らせるのである。そうしてみると、それはバルセロナの記憶であり、語りは畢竟バルセロナ自身の重層的な過去と現在、そして未来を語るものであったということなのだろうか。2024/12/03
ehirano1
175
期待通りの怒涛のラッシュと奥深さに感嘆。『本を燃やす人間はそのうち人間を燃やす』という言葉を何処かで聞いたことがあり、私はそれに共感しているので、読中大変悩ましく感じました。エピローグはまるでその情景が目に浮かぶようで美しく、そして各々登場人物達は収まるべきところに収まったので読後感はとても良いものでした。2024/01/04
KAZOO
135
最後まで読んでしまいました。最初はあまり気乗りがしなかったのですが(本当は本についての話だと思っていたので)、この作者のストーリー手リングの才能が結構あると感じました。「オペラ座の怪人」を思い起こしながら読んでしまいました。2014/03/17
よむヨム@book
127
★★★★☆ 星4つ ダニエルが虎の尾を踏んで、一人の女性が殺され、ちょっとした探偵物語が様相が変わってきた。 この下巻では、「亡霊の回想」が秀逸で手紙の話に引き込まれていった。 フリアン、ペネロペ、ミケル、そして、ヌリアの話からは「悲しみ」しか感じられず、「運命」、いや、リカルド・アルダヤの「傲慢」からくる悪夢としか言い様がない。 「運命」と言えば、ダニエルが忘れらてた本の墓場で「風の影」という本に出会ったことだろう。 そして、この本によってダニエルとフリアンが結びついている。→2022/02/24
のっち♬
111
「戦争は、忘れることをえさにして大きくなっていくのですよ」—徐々に明らかになるにつれて、重なり合っていく登場人物たちの足跡。内戦下の都市を支配する恐怖のシンボルともいうべき刑事フメロが不吉な影を落とす。「七日後に、ぼくは死ぬことになる」からの展開は怒涛の勢いで加速し、巧緻かつ愛憎入り乱れたシナリオに引き込まれる。中でも『亡霊の回想』は痛切で、高潔な友情や愛情が情念をこめて描かれている。決して明るい物語ではないが、希望と力強さを感じさせる大団円。詩的で美しい表現を交えながら、終始本への愛を感じさせる作品だ。2020/09/04
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