内容説明
リヴァプールに住むキャル・ムーニーは、逃げた伝書鳩を追ううちに迷いこんだ家で、謎の絨毯と巡り合った。そこに封じ込められていた伝説の魔法世界〈綺想郷〉をかいま見たキャルは、それを破滅させようとするものと、守ろうとするものの闘いに巻き込まれてしまう。〈綺想郷〉には、魔法を使う人間とは別の種族〈精魅〉が棲んでいた…世界幻想文学大賞受賞作家の最高傑作長編ファンタジー登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
279
クライヴ・バーカーは初読。現代イギリスを代表する幻想文学作家の一人のようだ。絨毯に封じ込められた魔法世界「綺想郷」というのは、斬新な発想かと思う。そこへたどり着くまでの助走が幾分長すぎるようにも思うが、綺想郷に入る前あたりから読み手のスピードも上がっていく。人間世界(物語中ではカッコウの国)が綺想郷と相対化されることで、どちらが真に現実であり、また幻想であるのかが揺らぐといったあたりの展開にも新しさを感じる。ただ、善悪がはっきりし過ぎている(少なくても上巻では)のは、物語としての深みに欠けるように思う。2016/12/12
扉のこちら側
77
2016年325冊め。【170-1/G1000】魔法の絨毯に封じ込まれていた伝説の魔法世界『綺想郷』をめぐる、世界を破戒させようとする者と守ろうとする者の戦いに巻き込まれる主人公。なんの変哲もない日常に見えて、しかしそこに潜む不思議を糸口に、日常から次第に乖離していく描写がうまい。『ハリー・ポッター』的な話と思って読み始めたが、大人向けの描写が多く、そしてどうやら大きな伏線があるようだ。下巻へ。2016/05/11
セウテス
56
魔法世界『綺想郷』フーガは、魔法の絨毯として織り込まれている。このフーガを滅ぼそうというものと、護ろうとする守部を受け継ぐ人間たちとの戦いの物語です。絨毯に魔法世界が在るとか、敵やフーガの住人たちの呼び名が独特であり、中々物語に入り込み難い。ゲームのドラクエやFFの世界を考えていたが、本作は随所に在る表現から、大人に向けて書かれた作品の様だ。各主要なキャラたちの目線で話の展開が代わるのは、キャラをよく知る上では良いスタイルだと思う。しかし、それにしては善悪とか敵味方とかのキャラの濃さが、薄く感じてしまう。2016/10/28
ハルバル
5
現実に隣り合って存在する異界がある一枚の絨毯に封じ込まれている、という発想には驚かされる。魔女イマコラータの連れる亡霊のような姉妹の気味悪さやグロいクリーチャーはいかにもバーカーといったデザインセンスでワクワクするし(まぁモンスターが列車に吹き飛ばされて死ぬのは弱すぎて拍子抜けだが笑)、後半に絨毯の封印が解けて「綺想郷」が現れる場面の爆発的なイマジネーションも素晴らしい。一気読みさせる筆力はさすがなんだけど、まだまだ謎が多いなぁといった感じでどう展開するのか下巻も楽しみ。2018/01/19
Empirestar
4
血の本のパーカーが書く重厚なアーバン・ファンタジー。とにかく血と臓物のイメージを喚起させる映像的な描写がすざましい。「織物」の中に危機のために封印してしまった精霊たちとそれを守る人間。そして精霊に恨みを持つ3人の魔女たち。それらのプレイヤーたちがゲーム的に自らの利得を最大化するように渦の中に囚われていく感覚が素晴らしい。『ダムネーション・ゲーム』を髣髴させる部分もある。2009/05/19