内容説明
一枚の絵のために祖国ロシアを追放された画家バラノフ。ヒトラーのドイツからも追われアメリカに渡るが…亡命生活を送る画家の悲哀を描く「緑色の裸婦」他六編。第二次大戦から冷戦へ。時代を読みながら、芸術家、中年夫婦、若者たちのすがたをドラマチックな構成力としゃれた語り口で活写するショーの傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
高橋 橘苑
16
短編小説に定評のあるショーらしく、佳作の揃った7つの作品。表題作「緑色の裸婦」は結末は悲劇的なのに、滑稽感がほとばしるユーモア作品。その他「分別盛り」、「その時ぼくらは三人だった」もかなりの秀作。ところで、内野儀氏の解説文で、アーウィン・ショーという作家がどんな経歴の人なのか詳しく知ることが出来た。かなりの的確で冷静な批評だと思えるが、この手の「脆弱さとスマートさが同居している」作家は、本質的に長編に向いていないのかもしれない。成功してしまったフィッツジェラルドみたいだ。あぁ長編を読む気がしなくなった。2015/11/19
A
3
そのときぼくらは三人だったがよかった。 ヘミングウェイ好きならきっと好きだと思います。2016/04/29
たこらった
1
マッカーシズムに疲れてこれを道草読み。青山南のあげている3篇はたしかにそれ関連ではあるが、全7篇の中では赤狩りとは直接関連付けられない「街の物音(Noises in the City)」が一番刺さった。不慮、刑罰、祈り。挿入小噺(最後に現れるデカい魚)も後を引く。不条理な暴力・復讐に怯えるとして、問題は誰が誰に何故に、だと思うのだが見えないからこその神頼みなのか。復讐劇の「墓地の金鳳花(Goldilocks at Graveside)」は背景知識が乏しいせいで楽しくは読めなかった。小笠原豊樹の翻訳は良い。2023/10/03