内容説明
南フランスの小さな町、作家のデイヴィッドと富裕な女キャスリンのボーン夫妻は新婚旅行で滞在中、マリータという美女と出会う。3人の間に愛と不安がはぐくまれ、奇妙な三角関係が生まれた。異性愛と同性愛、男と女の性の逆転が秘められ、エロティシズムに満ちた倒錯的な日々が始まる……。文豪ヘミングウェイが新たな地平を切り拓こうと試みた最後の作品で、死後発見され、衝撃を呼んだ話題の書、ついに文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ZAKI★
9
久しぶりのヘミングウェイの作品。今まで読んできた男の人生観みたいな内容の作品と比べるとかなり異質な作品。三角関係、レズビアン、男女立場入れ替え、容姿を似せるなど、、、。個人的にはあまり登場人物の感情を理解できなかったが(急に口調を荒げるところとか)、日中からお酒を飲んだりビーチで泳いだりして過ごしてる様子は読んでて心地よかった。日本ではあまりこういう生活はできないが、それを本の世界で楽しむのもまた良き。2025/04/09
Holden Caulfield
3
ヘミングウェイの没後出版された単行本、 「移動祝祭日」 「海流のなかの島々」 「危険な夏」 「エデンの園」 以前から何度もレビューで語っているが、 ヘミングウェイは特に好きでもない、 今回 まだ未読だったので購入、 毎度の事ながらアブサンを呑みたくなる… 2019/03/19
訃報
3
小説内小説ではヘミングウェイの小説作法が語られていて勉強になった。男しか登場しない、暴力と荒涼とした自然のマッチョな小説内小説、書いている作家は女にほとほと困り果てているんだなというのがよくわかって笑えるが、主人公の少年が父のマッチョさに逆らってるあたり、やっぱなんとか男を否定して女を理解したいという気持ちもうかがえて、かわいいオッサンやなと。それはこの小説で女を男の理想のヒロインではなくいかにも生の女らしく描こうとしてるヘミングウェイ自身の姿勢でもある。実際、現実でも女に苦労していたそうで笑2013/10/14
i
2
男性に近い見た目になろうとしたり、夫婦間に新たな女性(マリータ)を連れてきたり、夫のいる状態で同性愛をしてみようとする妻キャスリンの精神状態が複雑で理解しづらかった。振り回される夫とマリータがかわいそうだし、キャスリンも自己との葛藤で苦しい部分はあったんだろうと思う。飲酒の場面が多くてお酒を飲みたくなる。2020/05/20
ポポ
2
新婚の妻公認の、いや、公認というより妻にそそのかされての、妻と美女と夫の三角関係。その異常な設定の中での、男の快楽の園の物語かいと思いきや、夫は意外にノーマルな感覚の持ち主で、異常な設定が単に読者の性的興味をそそるというような内容ではなく、読み進むにつれて崩れていく夫婦の関係が実にリアルで面白かった。なんでも妻の要求に従ってきた夫なのに、最後には自分の作品も焼かれ、自意識もズタズタにされ、実に哀れだ。極端化されてはいるが、多くの女が奥に秘めているであろうエゴと残忍さがよく描かれているような気がした。2018/11/27