内容説明
若い作家・野島は、劇場の廊下で初めて杉子を見たときから、その美貌に心を奪われてゆく。彼のひそかな思いを知った年上の友人・大宮は、恋の成就のために力を貸すことを約束した。しかし、意外なことに杉子の思いは大宮に傾いてゆく…。友情と愛情、恋愛と失恋を描いた近代日本文学の代表的青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぎゅうにゅう。
20
いやあ、面白かった。。今から100年近く前に書かれたものなのに(Wikipedia参照)ここまで登場人物の心に共感してしまう作品って凄いと思う!野島の杉子と会うたびに変わってしまう心情、終盤の大宮の杉子に対する心情(自分は武子派)。下篇の杉子と大宮の手紙のやり取りは主人公野島からすると見ていられなかった。。大宮でなく野島が主人公なのが、また良い味出してると思う。。(「友情」について)2015/02/08
カタコッタ
19
これは素敵な作品。読んでいるうちにどんどん気持ちが純粋になっていくような気がしてきた。読みやすく、共感出来る。図書館の児童書の中にあったが、恋する多くのヤングアダルト達の目に止まって欲しい。恋する時の息苦しさ、これも好き!2019/07/18
冬見
18
「友情」は再読。「初恋」を読みたくて購入。「友情」やっぱり大好き。読後、ここまでタイトルが胸に迫る小説はなかなかない。改めて読むと、大宮に惚れる気持ちが大いにわかる。そりゃ惚れるよ。以前読んだときは感じなかったが、今回は読めば読むほどS氏がちらつき、解説を読んで「わかるーーー!」と声を上げた。「初恋」を読んで、この二作が同じ文庫に収録される理由が分かった。なるほど、感情描写についてはかなり自分の経験をスライドさせている。武者小路の作品は今まで四作読んでいて、その全てがおもしろく自分に響く。好きな作家だ。2017/12/07
はじめさん
11
友情は既に新潮版持ってるので、バーターの初恋のために買ったよ。/ 近くに下宿することになった美人姉妹にときめく青年。姉よりも妹のほうがタイプ。姉が学業をおえて郷里に帰り、ぽつりと妹が「淋しい、あなただけが頼りよ」とつぶやく。これを本気で受け止めて燃え上がってしまうのがピュアな男の悲しいところ。やがて妹も去り、「名字」が変わったことを伝聞で知る…つまり、そういうことだ。/ 浜辺に名前を書いて消す、とか脳内で作った風景なら才人。実際にやったら変人。壁に彫るとかよりは環境的?/ 「初」恋ねえ。ふぅん。(H28/2016/02/11
鱒子
9
主人公、野島 彼の親友、大宮 そしてヒロイン 杉子 野島のモデルは実篤自身で、大宮のモデルは実際の親友、志賀直哉らしいです。男女に慎みが求められた時代の小説なので、まわりくどい感はありますが、その間の機微が良さだと思います。筋はいたってシンプルで、読みやすい本です。面白い!2015/12/09