内容説明
太平洋戦争末期の夏の日、海岸の小さな町が空襲された。あわてて逃げる少年をかばった少女は、銃撃されてしまう。少年は成長し、再びその思い出の地を訪れるが…。人生の残酷さと悲しさを鋭く描いた表題作ほか、代表的ショート・ショートと中篇を収録。
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
147
表題作について。これはキツイ、かなりキツイ。どうかしたらトラウマになってしまうかもしれない。しかし、作品としてはホントに素晴らしいと思いました。究極のシチュエーションってのは何でもないちょっとしたことから起こるんだと改めて思うと同時に、そういう時に限って狙ったかのように勇気と人間性が惨いまでに試される。そういったことを考え認識させられる良い読書でした。2023/03/21
やっさん
125
★★★ ショートショート及び短篇を収録。比較的無機質な印象を受ける星新一さんに対し、山川さんの作品はそれに叙情をたっぷり加えたような世界観だ。巻末に山川さんの生涯が紹介されていたが、唐突な最期に閉口した。2020/11/23
モルク
113
ショートショートと中編の9作品。表題作「夏の葬列」は大戦末期の疎開先で少年だった主人公を助けようとして銃撃された少女をそのままにしてきた主人公の後悔。大人になり再びかの地へ訪れ葬列に出会う。遺影はあの少女か?ではあの時少女は…短い話ながら少年がとらわれていた過去、そして安堵からの…。戦争の残した心の傷をえぐる。「待っている女」では煙草の「憩」が出てくる。私が子どもの頃の父の愛煙していた銘柄だったと父のことを思い出した。「煙突」はここに書ききれないほど心を揺さぶる。不滅の傑作だと思う。2021/09/29
YM
99
作者のことは知らなかったし、タイトルや装丁に惹かれた訳でもない。なぜこの本を読もうとしたんだろう。でも、今は忘れられない作品になった。どの短編もノスタルジックに日常を描いているけれど、とても暗い。ふっとした瞬間に、さらに暗さを増す。絶望する。しかし、また日常に戻っていく。強さやたくましさはない。それでも人生を悲観しながら何とか受け入れようともがいている気がした。僕はそこに異常に共感したのだと思う。2015/01/19
扉のこちら側
97
2017年15冊め。これは今まで読まなかったのが悔やまれる良い本だった。表題作は十数年ぶりに訪れた海辺の町で亡くなった少女を思い出す「元少年」。終戦前日、艦載機による機銃掃射から少年を守ろうとした少女を、白いワンピースが敵機から目立つため少年は突き飛ばして死なせてしまったこと男は悔いるのだが、物語には救いはない。そして「煙突」「海岸公演」の中編も、鬱々としたプロットの中に、はっとさせられる情景や言葉が浮かんできた。傷ついた人がささやかな幸せを手にしたり、恢復したりする話が好きな人にはお勧めな一冊である。2017/01/09
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