内容説明
山登りの好きな両親が山岳から岳から名付けた、シーナ家の長男・岳少年。坊主頭でプロレス技もスルドクきまり、ケンカはめっぽう強い。自分の小遣いで道具を揃え、身もココロもすっかり釣りに奪われてる元気な小学生。旅から帰って出会う息子の成長に目をみはり、悲喜こもごもの思いでそれをみつめる「おとう」…。これはショーネンがまだチチを見棄てていない頃の美しい親子の物語。著者初の明るい私小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mukimi
113
試験勉強の合間にちびちび読了。勉強してると次々思い浮かぶ将来の不安や過去の後悔を中和するゆるゆるほのぼの傑作エッセイ集。『わしもインドで考えた』に影響されてインドへ行った私としては筆者の生き方と物事の受け止め方は自由な渡り鳥みたいで憧れる。父子ともにのびのび自分の感情に素直に生きててとにかく楽しそう。人生が仕事に支配されて頭が窮屈になっている今の私に、もっと、欲望のままに、時の流れに正直に、のびのび人生楽しまな損なんちゃう!と気付かせてくれた。息子への愛が溢れてて、親になってから読むとまた違うんだろうな。2020/08/24
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
109
まだ息子に見捨てられる前のシーナさんと岳君の温かくほほえましい日々を綴った私小説。やんちゃな岳くんが次第にたくましく成長していく様が良い。小さいときのプロレスごっこに始まり、保育園のお友達と「いっぱいさつま芋を獲ってきた」お話や、父と子二人の八丈島への釣り旅行。「勉強なんていい、逞しく育って欲しい」っていうCMが昔ありましたが、まさにそんな感じ。こういう親子関係っていいなと思った。息子を持つ父親としては、うらやましく思う。私にとっては殿堂入りの一冊。★★★★★
ゆいまある
105
椎名誠という人は父親と縁が薄い人である。そんな椎名誠が岳という息子を持った。椎名誠本人によく似ていて、ガサツで喧嘩が強く、好きなことにとことんのめり込む。そんな息子が可愛くて仕方がない。共に過し、みるみる育っていくのが嬉しくて仕方ない。そういう父親の愛情がしみじみと溢れているいい私小説。これを椎名誠のベストにあげる人が多いのも納得。岳さん本人は成長とともにこの本のことを嫌がったらしいが、きっと今は誇りに思ってるんだろうな。2023/02/17
chantal(シャンタール)
93
すっごく良かった!椎名さんと息子岳くんの私小説。ちょっと腕白で勉強は苦手だけど、でもすごく子供らしい子供。釣りにのめり込んでお父さんの方が教えられる側に。そんな親子の会話や旅の話にすごく和む。岳くんは私と同じくらいの年代だと思うけど、子供の頃はまだ周りに田んぼや畑やジャブジャブ入っていける川があって、そこで遊んだものだ。今の子供はもうそんな風にして遊ばないんだろうな。それが良いとか悪いとかでなく、子供時代なんて短いんだから、勉強ばかりでなく、もっと遊べばいいのにって思う。親御さんも距離の取り方大事だよな。2021/08/20
扉のこちら側
83
単行本で初読、文庫で再読。子育ての本でもあり、親の知らぬ間の子育ちの物語でもある。こういう家族関係はよいと思う。2013/04/28