内容説明
二カ月余り、初の女ドクターとして北洋船団に乗り組んだ著者が、千人余の男たちの中、潮風に吹かれて見たこと、感じたことを愉快に綴る。第34回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
目次
テープは投げられた
海へのあこがれ
「ケイソン」と「チョコマン」
わがいとしの明洋丸
制限だらけの北洋漁業
「三食昼寝、ドリンク付き」の神話
医療無線で女を上げる
紅一点
優雅なる母船生活
時化と濃霧の漁業
ソ連製バターの味
明洋丸診療日誌
船団長の「歯痛」
縁の下の力持ち
懇問袋
北洋アクション・レジャー
帰りたくない!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
26
かつて我が国漁業の花形だった北洋サケマス漁。1船団は母船1隻と独航船40隻以上で構成され、乗組員総数1000人超。この大船団が、たった一人の船医を確保できないため出漁中止の瀬戸際に追い込まれる。本書はこの非常事態に、北洋漁業の長い歴史で初の女性船医として乗り組んだ著者の奮闘記だ。読んでいて海の男たちの愛すべき素顔になごみ、著者のコミュニケーション能力の高さに唸り、医師としての優秀さに驚く。そして何より、めちゃくちゃ面白い! この手の作品としては、名作『どくとるマンボウ航海記』に匹敵する一冊だと思う。2016/11/26
貴
12
女性の医師が男性に劣らぬ仕事を千数百人の男の職場の中で果たす。女性らしさを失わない姿が、とても魅力的でした。母船式のサケマス漁が終結した今とても貴重な本です。2023/10/01
こぺたろう
9
読了。1982年の記録。母船式のサケマス漁は、米露の厳しい操業規制を受けて、その後、ますます出漁できなくなっていきます。母船での生活を生き生きと描いた本書は、貴重な記録であるように思います。カラッとした感じの人柄が滲み出た、楽しい本でした。2022/06/04
東森久利斗
4
知られざる北洋サケ・マス船団の実態。最新鋭のテクノロジー、効率・合理的なプロセスに支えられた最先端の事業。船員の健康管理、充実した衣食住、生活環境へも拝領。離島の無医村での孤軍奮闘記との思い込みを、気持ち良く裏切る内容、新鮮な驚き。魚好きとしては、感謝に堪えない”はたらくおじさん”の世界。体験してみたい。3K 職種の代表選手への大きな誤解、監獄船、海のタコ部屋、遠洋漁業へのイメージ、悪評を完璧に払拭。筆者のおおらか、好奇心旺盛、物怖じしない、社交的な性格が、イメージアップに華を添える。さらば「蟹工船」。2021/05/23
ともも
2
前書でつかれたので楽しい本を再読。船医さんの航海記が好きなのね。あんまり見つからないけど。本書は鮭鱒漁の母船で女性船医が1000人以上の海の男を預かる航海記。風疹、盲腸、歯痛、他にも暴れた鮭が肛門につっこんできてケガとか。なんだそれ。2018/11/18