内容説明
麻子は同じ職場で働いていた男と婚約をした。しかし挙式二週間前に突如破談になった。麻子は会社を辞め、ウエイトレスとして再び勤めはじめた。その店に「あの女」がやって来た…。この表題作「地下街の雨」はじめ「決して見えない」「ムクロバラ」「さよなら、キリハラさん」など七つの短篇。どの作品も都会の片隅で夢を信じて生きる人たちを描く、愛と幻想のストーリー。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
624
表題作を含めて7つの短篇を収録。この人の短篇集は2冊目。以前に読んだ『チヨ子』にしてもそうなのだが、長編においてはさほど気にならない、作為が露わに目についてしまう。表題作にしても作りこみ過ぎの感が否めない。最後に置かれた「さよなら、キリハラさん」は、まるで種明かしのごとくである。リアリティのあり方が違うといえばそれまでなのだが。そうは言っても「ムクロバラ」などは、独特の「怖さ」を持ってはいるのだけれど。私見では、この人はやはり長編においてこそ本来の力量が発揮できるのではないか。2020/10/19
しゅら
369
不思議な話の短編集。新井素子さんの作品に似てる気がする。26年前の作品で、2人ともSF書いてたから影響受けた?何が言いたいかは自分で考えてね的な、あまり説明しないことで怖さを強調させてる。この7編の作品をどんな意味で1冊にまとめたのかも分からない。謎は多いが雰囲気がいい。昭和っぽいし。「『そういう気持ちは、所帯持ちの男なら誰だって抱いてる。家庭は大事だけど、同時に足枷でもあるわけで、鎖を引きずってるような気がしてくることは俺だってあるよ。だけどそれを口に出しちゃいけないな。それは、旦那の方が悪いよ』」2020/03/11
zero1
307
7つの短編が収録された一冊。日常ミステリーあり、ホラーありと宮部らしい。表題作は結婚間近で捨てられた女性の話。「決して見えない」は都市伝説にありそう。「不文律」は視点の変化が特徴。「混線」は思い切りホラー。「勝ち逃げ」は人に歴史ありの話。「ムクロバラ」は巷に起きる事件の背景をいろいろ考えさせられた。「さよなら、キリハラさん」はSFなのか?解説は室井滋。二人は意気投合して温泉とか一緒に行っているという。本書は粗いが昔の短編集を再読すると、作家の足跡が分かる。図書館で除籍になる前にもっと読まねば。2018/11/28
yoshida
261
宮部みゆきさんの不思議な味わいの短編を7編収録。読んでいて最も好きだったのは「勝ち逃げ」。独身を貫いて亡くなった勝子叔母さん。残された弟妹夫婦達は、勝子の生涯は味気ないものだったと勝手に話す。勝子に宛てた古い手紙を切っ掛けに、勝子の生涯の新たな一面を知る。暖かな読後感。表題作の「地下街の雨」。同僚との結婚式直前に一方的に挙式を破談にされた麻子。麻子は退職し八重洲地下街の喫茶店で働き始める。そこで森井曜子と知り合った麻子は、森井の異常さに恐れを抱く。後の作品の萌芽を感じる作品。多様な作品が読める短編集。2016/09/10
しんたろー
235
10年以上ぶりの宮部さん…初めて短編集を読んでみた。7つの作品は、奇妙なラブロマンスの表題作に始まって、身近に起こりそうな奇譚、インタビュー形式で一家心中の謎を追うミステリ、怪奇ぶりが目に浮かぶホラー、星新一さんを彷彿させるSFチックなファミリードラマなど、その幅広い筆に今更ながら感心させられた。1994年発表の作品集なので時代を感じさせる古さもあるが、その発想力は色褪せるものではないし、アイデアだけに頼ることなく「人」を描いているのが惹かれる理由だと思う。作家の魅力は短編にも表れると再認識した一冊。2019/06/03




