内容説明
近世初頭、遊び人のヤサブローという男が、長崎から朱印船にのって旅立った。ルソン、カンボシア、コーチ、そしてトンキン。男を南方への彷徨にみちびいた、ただひとりの女・ゆめへの“思い”を、静謐な文章でつづる「黄昏」他。日本と東南アジアを舞台に、古代から現代までの時間を自在に往還する想像力と、文体の粋をもって、一編ごとに小宇宙をかたちづくる12の幻想綺譚集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三柴ゆよし
18
東南アジアと日本を舞台にした十二の幻想小説が収められているが、作者のまなざしは、物語を語るということよりも、むしろ物語が物語として生起するその瞬間や、あるいは物語以前とでもいうべき未生の物語に注がれている。単なる奇想小説だと思って読みはじめた読者は、おそらく面食らうにちがいない。たとえば「指、ゆれる」では『日本霊異記』にある説話から出発すると思われた物語が結局は物語られることなく終息し、「青竜山」では、一族の千年以上にわたる歴史が、ひとつの石の記憶として語られる。ボルヘスを髣髴させる粒揃いの作品集だった。2012/09/15
あにこ
0
当たり外れは6:4ぐらいかな。でも確かに心に残る。2009/11/21