内容説明
推理作家・中里英光のところに手紙が届いた。差出人は浜倉和樹、中里に弟子入りを志願する28歳の青年だった。弟子はとらない主義の中里だったが、浜倉の熱心さに、手紙のやりとりだけなら、という形で結局弟子入りを認めた。浜倉の疑問に答え、中里は自らの理論を展開するが…その中に意外な事件が隠されていた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
お笑いループシュート
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平成元年に起きた殺人の話。著者を思わせる推理小説家と小説家志望の青年との手紙のやりとりで、話が進められていく。著者の推理小説観が分かる一冊。2016/09/14
schizophonic
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全編、書簡のやりとりで、推理作家と作家志望者がミステリー論を交わしていくのだが、実作や実在の推理作家のエピソードを交えて綴られており、類似するトリックの問題や、現実の犯罪と小説の関係などに関する考察が興味深い。それらとともに、作家の身辺の事情が織り交ぜられ語られていくのだが、終盤にいたり、謎らしい謎のなかった話が、紛れもないミステリに一変する。著者の提唱するストーリーそのものがトリックをなすというストリック理論の好例となっている。オチ自体は予想のつくものだが、ラスト1頁で構図が反転する構成の妙を味わえる。2012/01/07