内容説明
九州の小藩からわずか十七歳で名門・上杉家の養子に入り、出羽・米沢の藩主となった治憲(後の鷹山)は、破滅の危機にあった藩政を建て直すべく、直ちに改革に乗り出す。―高邁な理想に燃え、すぐれた実践能力と人を思いやる心で、家臣や領民の信頼を集めていった経世家・上杉鷹山の感動の生涯を描いた長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
199
財政危機にある米沢藩を 立て直した 名君として、クローズアップされ、 ベストセラーとなった本。 日本が不景気になるたびごとに 読まれる本書は、ある意味 贅沢へのいましめ の本であり、勤勉な日本人には向いている気がする。 韓国歴史ドラマでも、「民のため」という 台詞が頻繁に出てくるが、藩主自ら節約に 努め、藩を蘇らせていくという話は定番だが、 読んでいて気分がよい。2014/06/14
竹城 俊之介
80
30年振りの再読。最も尊敬する歴史人物。あのJFKが尊敬した日本人。少年時代に読んで感動し、上杉鷹山関連本を数多読み漁るきっかけとなった一冊。色々読んだ本の中でも、本書の分かりやすさは抜きん出ています。 藩を幕府に返上するレベルの借金を抱えた米沢藩。もはや絶望しかないこの国を、様々な艱難辛苦を越えて立て直した男。 藩や武士ではなく「民が豊かになる」事を目的とした改革。当時の社会状況を考えると、この思想に至ったこと自体が奇跡です。ちょっと信じられないレベルの清廉性と優しさを兼ね備えた名君中の名君です。2022/05/22
Gotoran
57
先に読んだ内村鑑三『代表的日本人』で紹介の上杉鷹山(ジョン・F・ケネディ大統領が最も尊敬する日本人として答えたことでも有名)。”仁=思い遣り”の信念で米沢藩の人々に働くことの喜びと生きることの喜びを与え、為政者としてのみならず人格者としても尊敬された上杉鷹山。歴史の中に現代に通じる組織と人間の問題の素材を見出すことに長けた童門冬二氏が現代の時世に置き換えて分かりやすく解説を加えてくれている。かなりのページ数ではあったが、飽きること角興味深く読ませて頂いた。2021/09/06
扉のこちら側
56
初読。2015年775冊め。話には聞いてはいたが実に名君だったのだとわかる一冊。戦国武将で仁に篤く、21世紀のビジネスマンとしても世界に踊り出せそうな程のマネジメント力。歴史小説をなのかビジネスノンフィクションなのかと読みながら思ってしまう程。米沢の冬の厳しさは東北人として想像がつくし、その貧しく破産寸前の藩を建て直したというのがなんともドラマチック。米沢織や紅花など、今も続く米沢の伝統はここから花開いたんだな。2015/07/09
夜長月🌙@新潮部
55
上杉鷹山。ジョン・F・ケネディが日本人記者団から「もっとも尊敬する日本人は?」と問われて答えた人物です。おそらくケネディは英語作品「代表的日本人(内村鑑三)」を読んでいたのでしょう。鷹山公は財政が困窮していた米沢藩主として実に17歳にして行政改革をはじめ「人民(領民)の人民による人民のための政治」を行ったのです。あの時代に殿様が弱者の福祉を考えるなんて。しかし、一番頼りにしていた人を正に「泣いて馬謖を斬る」ということもありました。ドラマチックなその生涯は響くものがありました。2017/12/30