内容説明
愛した人のことを、そのままずっと忘れずにいられるものだろうか―。衣津子は17歳の時、瀬田雄次と知り合い、好きになった。が、雄次は仁侠の道を選び、衣津子を遠ざけようとする。生き急ぐ雄次と同じ修羅を覚悟した衣津子は、背中に鯉の刺青を彫って、雄次と一緒に歩いていこうとするが…(「あづま橋」)。表題作他4編、男と女の世界を心に沁み入る文章で描く、伊集院ロマンの結晶。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りょうすけ
2
様々な男女関係を描いた短編集。その形に良いも悪いもないように感じた。うまくいかない事の方が世間では当たり前だと知って前に進んでいけばいい。そんな事を考えさせられる一冊。2014/05/28
いくみ
0
5編からなる短編集です。 この短編集は、一見強く見える女性達が出てきますが、みんな辛い過去を持っています。 そして色々なものを包み込んで逞しく生きている。 どれも伊集院さんらしい余韻を残す素敵な作品ですが、特に好きなのが、「本牧ラット」。 登場人物がかっこよく、ラストでは意外な真実が明かされます。 「にせアカシア」に出てくる”花盗人(はなぬすびと)”という響きがとても気に入りました。2007/10/06
あゆ
0
本牧ラットが沁みたな~2012/01/07
jjj
0
雄次は浅草寺の裏手に行った。妙だなと衣津子は思った。物陰に隠れて様子を見ていた。雄次はひとりの浮浪者に近づいて行った。具合いでも悪いのか男は横になっていた。雄次は何か声をかけると、ポケットの肉饅頭を男の顔のそばに置いた。そうして周囲を見回すと、何事もなかった顔をしてゆっくりと歩き出した。衣津子はその日雄次の姿を見て、たとえどんなことがあろうと自分はこの人についてい行こうと思った…。(161頁)この物語のなかで、心に残った一文です。2023/07/09