内容説明
「武勇伝なんぞするやつァ、戦をしたうちにへえるものか」二百三高地の激戦を生きのびた男はそうつぶやいた…。シベリア出兵で戦死した兵士の遺族を助ける説教寅の男気を描く表題作「初湯千両」など、華やかな大正ロマンの陰で、時代の大きなうねりに翻弄される庶民に味方する、粋でいなせな怪盗たちの物語六編。誇りと信義に命を賭けた目細の安吉一家の大活躍。堂々の傑作シリーズ第三弾。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
51年東京生。「地下鉄に乗って」で第16回吉川英治文学新人賞、97年「鉄道員」で第117回直木賞、00年「壬生義士伝」で第13回柴田錬三郎賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
169
『初湯千両』に粋の極みを見、『共犯者』には喝采。『宵待草』に惚れ、『大楠公の太刀』に号泣。『道化の恋文』に切なさ覚えて『銀次蔭盃』で侠気の頂きを見せつけられる。感情という言葉が担うあらゆる要素が揺さぶられ、感受性が丸裸に炙り出される。『銭金よりも命よりも大事なものァ、この世にいくらだってあらぁ』今回も楽しく泣かせて頂きました!読者の期待と著者との勝負、流石に稀代のストーリーテラーは裏切らない!粋に鯔背な面々の、スケール大のカッコ良さに毎話出会えるのは僥倖。このシリーズは、粋な読書を約束してくれます‼️🙇2024/06/15
佐々陽太朗(K.Tsubota)
115
銭金が大事だと云ってもせいぜい命の次だろう。男にゃ命より大事なものがある。いやさ女だって同じだ。通さずばならねえ筋さえ通して生きりゃあ、男は男、女は女だ。最近私は困ったときには心の中でこの言葉を何度も呟くことにしている。「俺は男だ。俺は男だ。俺は・・・」2015/11/15
いこ
107
このシリーズは面白すぎて、どんどん読んでしまうのが勿体ない。それで、間に別の本を挟みながらボチボチ読んでいる。そして、感想にも困っている。1巻の感想にも2巻の感想にも「粋でいなせな姐御、兄貴たちが格好いい」と書いてしまった。困ったことに、この3巻もみんな揃って格好いいのだ。素敵なのだ。しかも、どんどんその素敵な女っぷり、男っぷりが上がっているような気がする。あぁ、ネタバレ書きたい位!この巻の解説は、テレビドラマで松蔵を演じた十八代目中村勘三郎さんで、この解説も必読である。こちらも実に粋な解説なのである。2024/02/24
たいぱぱ
88
シリーズ3作目にしてまだ泣かせてくれる。いやむしろ一番泣いたかもしれない。「大楠公の太刀」「道化の恋文」「銀次蔭盃」にはボロボロにやられた。栄治兄ぃ、安吉親分、銀次親分、森鴎外、チャーリーハナ。身分も性格も違うがみんな本物の漢だ。おこん姐さんが夢二に切った啖呵、そして小龍の最後の切り口上は女の中の女。カッコ良過ぎて泣けてくるよ。彼らの彼女らの粋な漢っぷりを人生の一度でいいから自分も発揮したい。初めて読んだ『壬生義士伝』から、浅田さんはどんだけ俺の体内の水分を失くせば気が済むのか?もっと泣かせてもらいます!2020/08/09
となりのトウシロウ
71
シリーズ第三弾。天切り松こと村田松蔵の闇がたりで、安吉親分一家の説教寅弥、黄不動の栄治、振袖おこん、書生常、それぞれのイキでいなせな話が今作でも炸裂です。松蔵と康太郎と仁太の話も良かったですが、目細の安こと安吉親分が銀次親分に網走まで会いに行く第六話「銀次陰盃」は親分と弟子の信義の深さに目頭が熱くなりました。この安吉親分かっこいい!!この親分だからこそ、人情に厚い弟子が集まるんだなぁ。2023/03/04