内容説明
突然の事故で記憶と左眼を失ってしまった女子高生の「私」。臓器移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその左眼は様々な映像を脳裏に再生し始める。それは、眼が見てきた風景の「記憶」だった…。私は、その眼球の記憶に導かれて、提供者が生前に住んでいた町をめざして旅に出る。悪夢のような事件が待ちかまえていることも知らずに…。乙一の長編ホラー小説がついに文庫化。
著者等紹介
乙一[オツイチ]
’78年福岡生まれ。17歳の時、「夏と花火と私の死体」で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、デビュー。ファンタジー・ホラー小説界の若き俊英として活躍中
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
260
グロッ。でも乙一さんの作品は、それだけじゃないとこが人気の秘訣。もう少しあっさりまとめてくれたら、もっと私好みなんだけど。2016/11/28
黒瀬
159
事故で記憶と左目を失った菜深。移植手術を受けたことによって左目に光は戻ったものの、身に覚えのない映像を勝手に再生し始める厄介な代物を抱える羽目に。それは眼球のかつての持ち主の記憶だった。時折流れる映像をヒントに持ち主の故郷と姉を訪れるという心温かな話かと思いきや、あらすじにある通りサイコなホラーへ。だがそれでは終わらない。猟奇的な面も多いが犯人の周りで起きた出来事は良い話のように聞こえるから不思議だ。エピローグの余韻も気持ちが良く、砂織の知っている『私』が消えてしまっても菜深との交流が続いてくれればと願う2021/03/14
hit4papa
137
眼球の移植後、見覚えのない人々や風景を実感するようになった女性の物語です。並行して語られるのは異能の殺人者の行動。グロテスクで幻想的な雰囲気とミステリのような展開といい、乙一さん独特の世界観が堪能できます。せつなさ満開のラストは、全ての謎が氷解する快感をともないます。
sk4
133
切なさの達人の描く、グロいホラー小説。 何が一番怖かったって、記憶を無くして不安でしょうがない真っ只中の菜深への周りの態度。特に母親。 我が子のピンチにそれは無いだろう母ちゃんのくせに!と何度も泣きそうになった。 三木の特殊能力のおかげでグロい中にも阿鼻叫喚が無いので、痛さは無く読み通せます。 そういう意味でもグロいホラー小説の入門書としてはオススメかもしれません。2012/09/12
いつでも母さん
132
息子の本棚よりちょいと失敬して・・乙一だから覚悟して読んだ。『ありがとう。記憶を見せてくれてありがとう。あなたがずっといっしょだったから、私は途中で投げ出さなかった。最後までがんばることができた。』不覚にもラスト近くのここで泣けてしまった。初めからそこはかと薄暗い雰囲気に纏われたテイストなのだが、実は哀しいほどの愛の話でもあったのだなぁ。息子よ、この感想を話し合いたい母がここにいるのだが・・どうよ?2017/11/20