内容説明
黒い水中眼鏡をかけた女が、精神科医の前にあらわれた。ある朝、突然目が開かなくなってしまったという。自宅で発生した火事によって夫を失ったことが原因かと思われたが―。治療が進むにつれ、驚愕の真実が浮かび上がっていく表題作ほか、難病の妻の介護人として雇われた女性が、歪んだ夫婦関係に巻き込まれていく「ペンテジレアの叫び」など。サイコサスペンスの傑作全三篇を収録。
著者等紹介
逢坂剛[オウサカゴウ]
1943年東京生まれ。80年「暗殺者グラナダに死す」でオール読物推理小説新人賞を受賞しデビュー。87年「カディスの赤い星」で直木賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。著書多数
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たぬ
32
☆4.5 逢坂氏6冊目はサイコホラーを3編収録。いやあ狂った人間は滅茶苦茶怖いね。はたから見ればごく普通、その人物じゃなく身近にいる別の人物のほうが圧倒的に怪しいのに実は…ってやつ。3編ともオチが予想もつかなくてハラハラドキドキしながらあっという間に読み終わった。2021/02/08
Yu。
32
最後の最後まで何が待ち受けるのか分からないないという騙し技がもうたまらない“そーくるかフェスティバル!!”‥いえ、心に棲まう“闇”と“病み”をテーマに描かれる3つのサイコサスペンススリラー。いいね〜!本作は全てが個性的でおもしろい。特にお気に入りは、精神病院を退院したある殺人者による復讐劇なのだが一筋縄では行かせないその変化に富んだサイコ技に翻弄され、そしてニヤリな結末がお待ちになる「悪魔の耳」。2015/08/19
ヨーコ・オクダ
30
逢坂センセお得意分野のうちの1つ、精神分析系ミステリ3本収録。異常やからと言うて、患者である登場人物に読者が思いつかないような行動をさせて事件を作り上げる…なんて単純な作品でないのは当然のこと!3本とも、読者を騙してくれる仕掛けがうまーく織り込まれている。中には「実はこうやったんでしょ?」て想像がつくものもあるんやけど、それはそれでラストにゾクッとするオチが添えられてたり…。見た目の異常性でインパクトが強いのは「水中眼鏡の女」人間の欲望に絡めて騙し騙され〜の展開が楽しいのは「ペンテジレアの叫び」かな?2018/05/27
かずよ
26
精神疾患の登場人物が出て来る中編ミステリー三話!気味の悪さが清張っぽい。2014/03/22
有理数
24
収録三編ともが非常に面白い傑作短編集です。ある意味見通しやすいアイデアかもしれませんが、全部上手に騙されたので、いい読者になれました。全て精神に関するミステリで、不穏な人間関係を見せられていると思いきや、かなり凝ったツイストで魅せてくれます。面白い面白い。表題作は、登場人物は性欲しか頭にないのかな、という描写はさておき、大胆な構成が素晴らしい。個人的にお気に入りなのは2編目の「ペンテレジアの叫び」。夫婦による交互の視点が絶妙な交わり方を見せたとき、そこから幕切れまで、息吐かせぬ展開にやられました。2018/02/14