内容説明
1968年4月、プラハ。カテリーナがナビゲータを務める国際放送番組『ミレナとワインを』のオン・エアが開始された。反響の大きさに周辺諸国は警戒を強める。この一件が引き金になり「プラハの春」も、亮介とカテリーナの愛も、破局へのカウントダウンを刻みはじめる―時代の奔流に呑み込まれ、歴史の闇に葬られた、美しくも哀しい愛。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユザキ部長
97
欲情と愛情を勘違いしてないか?冷戦下において自分は西側日本の外交官。相手は国交のない、国家として認めてもない国 東ドイツの年上で離婚協議中の子持ち女性。スパイ容疑などあらぬ罪で強制収容はもちろん死と隣あわせの可能性もある中でお互いの立場を認めながら愛しあう。ひたすらに狂おしいほど愛おしい。チェコスロバキアに対するワルシャワ条約諸国軍 軍事介入から東欧諸国の春、やがて壁の崩壊につながる歴史の中であったラブストーリーはブルタバ川の流れの様にひとつの必然だったのか?感動です。2014/03/11
あちゃくん
89
このタイミングで読めてよかったです。この本の主旋律は、日本人外交官と東独の女性とのラブロマンスですが、1968年チェコスロバキアで起こった『プラハの春』について知れてよかったです。著者は元外務官僚なだけに、ドゥプチェク、ヤン・パラフ、ブレジネフなど実在の人物の史実をうまく掬ってドキュメンタリーノベルとして仕上げていて、当時のプラハの社会状況が精緻に描かれています。国家というものに翻弄された男女の恋愛物語としても、現在のロシア、特にウクライナ・クリミア情勢を理解する補助線としても、読む価値のある本でした。2014/03/11
財布にジャック
78
下巻に入ってからだんだんと緊迫してきました。二人の恋の行方を気にしてなどいられない状況に、どんどんページを捲るのが怖くなって行き、ラストになるにつれて歴史の重みに押しつぶされそうでした。来月プラハを訪れる予定ですが、ヤン・パラフが実在の人物だと知り、プラハの地でヤンに手を合せようと心に決めました。またカテリーナは実在の人物ではないようですが、カテリーナのような女性が本当にいたのではと錯覚してしまうほどの力作でした。この作品の中でチェコの歴史の一頁を学ぶことが出来て大変有意義な読書となりました。 2013/05/19
chimako
67
「プラハの春」の一体何を知っていたのだろう。この小説を読むまでの自分の無関心さ。そこで起きた個人的な恨みつらみから国絡みの腹の探り合いまでが大きくうねり国を飲み込む。その中で愛する人と出会い、愛し合い、目の前でその人を無くすまでの物語。プロパガンダ、イデオロギー、ゲシュタポ、ヒエラルヒー、理論的テーゼ……聞いたことのある、でも理解していない言葉を調べながら本を読み進める。憤ることしばしば。民のために働くべき政治家は己の保身と欲のために平気で民を裏切り嘘をつく。ウクライナの厳しい情勢を見ながらの読書だった。2014/04/19
i-miya
54
2010.09.20 0810 (1997.05刊行)(うら書き)1968.04春、プラハ。事実素材のフィクション。プラハ、カフカが生きた街。(解説・吉野仁)14世紀、カレル橋。スメタナ、交響詩『わが祖国』-モルダウ。ミカン差し出す場面、印象的。コンテナ、金魚鉢。結構、リアル。「ミレナとワインを」『ベルリンの秋』既に上梓。(おさらい、登場人物)・カテリーナ・グレーべ、・稲村嘉弘、・ヤン・パラフ、・モニカ、大学生。第6章、「ミレナとワインを」。2010/09/23
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