出版社内容情報
カンボジアを舞台に描く東南アジア5部作
行方不明の同僚を捜しにカンボジアを訪れた自衛隊員、政府に投降した元クメール・ルージュ大尉、独自に学校建設を進める日本人。三者の視点を通してカンボジアの闇を抉る冒険巨編。(解説/杉江松恋)
内容説明
カンボジアに派遣され、そのまま行方不明になった自衛官。彼はなぜ、妻子を捨ててまでこの地に留まることを選んだのか。足跡を追う同僚が直面したのは、人身売買、汚職がはびこる腐敗しきった社会だった―。政府に抗い新たな村の建設を目指す元クメール・ルージュ大尉。独力で学校建設を進める日本人。彼らの闘いを通し、カンボジアの昏き深淵を覗く冒険巨編。第22回日本冒険小説協会大賞受賞作。
著者等紹介
船戸与一[フナドヨイチ]
1944年山口県生まれ。早稲田大学法学部卒。79年『非合法員』でデビュー。85年『山猫の夏』で第6回吉川英治文学新人賞を、89年『伝説なき地』で第42回日本推理作家協会賞を、92年『砂のクロニクル』で第5回山本周五郎賞を、2000年『虹の谷の五月』で第123回直木賞をそれぞれ受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
36
荒れ地とは、西暦2000年代のカンボジア。駆け巡るのは国の荒廃を憂うクメール人、そして3人の日本人。地獄への道は善意の石で舗されている、その言葉通りの、善かれと希む行動が、より哀しみの淵へと追い落とす。援助に名を借りた暴力、美名を粧うエゴイズム、不幸を騙る貪り。先進国と途上国の権力者たちの予定調和。年端のいかない少女を売り、使い捨てるような外道を、枯れ葉剤を撒くように根絶やしたい。が、正義の反対が他の正義のように、悪の反対もまた同様なのだ。本書の男たちの生き様。報恩と報復の美しさの前では、神も仏陀も霞む。2018/08/31
きょちょ
28
2000年ごろのカンボジアの話。 内戦は終わったが、夥しい数の地雷撤去のために海外から協力金を得る政府は、引き続き金を得るため意図的に地雷撤去をしない。 警官は賄賂を取ることばかり考え、人身売買が横行している。 実に腐りきった国家。 元自衛官の日本人が、有志とともに、地雷を撤去し、学校を作り人身売買される少年少女を救おうとするが、当然対抗勢力と闘うことになる。 闘いの凄まじさも味わえるが、何といっても彼の作品はナイスガイがいつも登場して、気持ちが良いのだ。 ★★★★2019/06/21
浦
8
当初の予想を裏切るヒーロー小説。カンボジアの状況の真偽は僕には判断できないが、日本の腐った状況ははっきりわかる。日本のお勉強の達人たちがのたまう、建前から導かれる理路整然とした理屈が、現実の言葉にしにくい部分を無視して状況をどんどん悪化させていく流れは毎日嫌というほど直面するいつもの日常だが、世界においても同じらしい。悲しく、そしてさわやかな。セリフ回しのせいか、なぜか漫画の藤田和日郎を思いださせる作品だった。2019/08/25
Takashi Takeuchi
8
7月に読んだ本 このところ感想を書く余裕なく、取り急ぎ登録だけ。感想はいつか後ほど。2019/07/25
カワセミ440
7
カンボジアってアンコールワットとかクメールルージュ/ポル・ポト大虐殺とか上っ面しか知らない国だ。どこまで真実なのか?っていう処はあるにせよ、船戸さんの筆は力強いね。華人やベトナムの傀儡?政権の闇ってどこまで深いんだろう?幼児売買とか今だにあるんだろうか?100年前の日本の田舎もそれに近いんだろうけど、悲しい事だよね。楢本と越路の二人って凄い。識字率向上のためカンボジアに学校を造る丹波ってモデル居るんだろうか?ドライバー兼通訳のヌオン・ロタも良いキャラだったけど・・。彼の国の闇の深さに読むのがホント疲れた。2016/02/16
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