出版社内容情報
死刑判決に苦悩する被告と弁護士。法廷推理
川原は、同僚殺害容疑で逮捕起訴された。弁護士の鶴見は、川原の無実を信じ、彼の故郷・小倉へ飛ぶ。すると、思わぬ過去が…。真実と正義のために闘う迫真のミステリ。書下ろし。(解説/長谷部史親)
内容説明
派遣社員の川原光輝33歳が、上司の田丸祐介と同僚の西名はるか殺害容疑で逮捕された。川原は犯行を否認するが、アリバイがない。無実を信じる鶴見弁護士は、川原の故郷・小倉で調査を開始。すると、彼は5年前にある事件を…。恋愛がらみの犯行と思われた殺人が、意想外の過去を焙り出す!死刑判決を前に、苦悩する被告と弁護士。真実と正義のために闘う迫真の法廷ミステリー。渾身の書き下ろし。
著者等紹介
小杉健治[コスギケンジ]
1947年東京都生まれ。83年、データベース会社に勤務の傍ら執筆した『原島弁護士の処置』で、第22回オール讀物推理小説新人賞を受賞。88年『絆』で第41回推理作家協会賞、90年『土俵を走る殺意』で第11回吉川英治文学新人賞を受賞。時代小説も含め、著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tsuyoshi
77
冤罪の可能性が高い殺人事件において下された死刑判決。「天命だ」と一転して控訴しない方針の被疑者に納得できない鶴見弁護士が考えを改めさせるべく、被疑者の真意追求へと動き出す。隠された5年前の殺人事件に辿り着き、偏った被疑者の復讐心と罪悪感を改めさせた鶴見弁護士の熱意に感心。被害者の女性の内面性には腹立たしさしかなく、終始歯痒い展開だっただけにラストでスッキリできて良かった。2018/04/24
ミーコ
56
ストーリーとしては マズマズでしたが ドキドキする様な引き込まれ感は 無かったです。川原は何故 冤罪なのに、死刑をすんなり受け入れるのか❗と思ったら そう言う事だったのですね。 松本清張さんの作品名が沢山 出て来るので 読んでみたくなりました。2016/02/25
Rin
38
無実なのに死刑判決された被告。だけど控訴しないという。その理由を、真実を知るために北九州市へと足を運ぶ鶴見弁護士。被告である川原の過去を知ることで事件の裁判が正しくあるように、裁判が汚されないようにとの想いが強く感じられた。まだベテランではないけれど信念を持っている鶴見弁護士はもちろん。北九州市の小倉や門司が出てきたのが嬉しい。登場する松本清張記念館も森鴎外旧居も知っている!行った!とテンションが上がりました。小倉市街に若松も清張の作品もたくさん出ていて事件とは別の部分でも楽しめた作品です。2015/10/13
となりのトウシロウ
27
最初に川原光輝が一審で死刑判決を受ける。状況証拠だけの不当判決であると確信する弁護士鶴見京介が、判決後、控訴しないと言い出した光輝の態度が理解できず、その理由を探るべく光輝の過去を探る。法廷ミステリーと書かれていながら法廷場面は最初だけ。事件の背景にある光輝を取り巻く人間ドラマが丁寧に描かれている。全てが明らかになって、光輝と京介の最後の接見室でのやり取りには胸が熱くなる。「人間は生きていかなくてはならない。生きる希望を失った者に、生きる勇気を与えてやれる人間になれ」京介の父の言葉が深く残る。2018/11/10
ttiger
18
真犯人が別にいる(と思われる)にも関わらず死刑判決を受けた被告人が控訴しないという。弁護人はその理由を問うが無実(と思われる)の被告人は答えない。真相をさぐるべく若手弁護人は被告人が故郷の北九州で起こした5年前の事件を洗い直す。著者の作品は4作目。本作中にたびたび登場する松本清張作品からも氏へのオマージュも感じられる。秀逸な法廷ミステリーである。2013/09/28