出版社内容情報
『岳物語』から25年。シーナ、「じいじい」になる
忍びよる老いを意識しながらも、相変わらず旅に原稿に忙しいシーナ。だが、アメリカに住む息子に子供が生まれ「じいじい」になるという変化が。家族の物語、新章スタート。(解説/もとしたいづみ)
内容説明
シーナ家に新しい家族が加わった。名前は「風太」。サンフランシスコに住む岳の子供だ。あいかわらず、旅に出て釣りをして写真を撮って酒を飲んで大量の原稿と格闘する日々の中に、涼風のように飛び込んでくる風太くんからの国際電話。スバヤク「じいじい」の声になって対応しながらシーナは思う。人生でいちばん落ちついたいい時代を迎えているのかもしれない、と―。シーナ的私小説、新章突入。
著者等紹介
椎名誠[シイナマコト]
1944年6月東京都生まれ。東京写真大学中退。「本の雑誌」編集長。世界の辺境地区への旅をライフワークにしている。1979年、エッセイ『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。88年『犬の系譜』で第10回吉川英治文学新人賞、90年『アド・バード』で第11回日本SF大賞受賞。映画監督作品に『白い馬』など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
65
「岳物語」の続編になる椎名さんの私小説。岳君も今や二児の父に。あのシーナさんも孫の風太君には「じいじい」になってニンマリ。風太君とシーナおじいちゃんとの会話がほほえましい。時がたつのは早いですね。ここでは何の大きな事件も起こりません。静かに時が流れて行きます。そんな物語。★★★
アナクマ
32
サンフランシスコに孫ふたり。新宿での写真展を控えて、タテ型動画を撮影したり、唐突に〈つぐも叔父の鑿と『長崎の鐘』〉を思い出したり。◉驚いたのは「私の殴った相手が歯を折り、その治療費をわたしが出すことに…」という挿話。還暦すぎての話じゃないか? まったくなぁ…。しかしまあ、生きてるとそんな事態になる場面もあるわけで、こんな時の著者の言動は〈ケチくさくない〉。むろん金銭的な意味じゃなく。粗暴にしてリリカル。ニンの滲み出る私小説。椎名誠は相変わらずであり、老いてなおそのニンを求める読者を持っている作家である。2024/06/02
就寝30分前
31
作者の得意とする私小説。若い頃はそれを読んで、ただ単に面白かった。今は自分自身と比較して、彼の歩んできた人生に嫉妬を感じている。もちろん、自分には想像できないプレッシャーや努力があるのだろうけど。自分の心の底が見えて興味深かった。2018/09/09
扉のこちら側
26
単行本で初読、文庫で再読。永遠に続けられそうなエッセイ。岳物語とは雰囲気が違うが、旅の記録は楽しめる。2013/05/04
もぺっと
20
『孫物語』から遡って読んでみました。取材旅行や原稿書き、また憤りを感じる出来事があったりと忙しい日々ですが、時たまかかってくる孫の風太くんからの電話が、一種の清涼剤になっていることがよくわかります。アメリカから電話があると、すっかりじいじいの声になる椎名さんの姿が微笑ましいです。風太くんの出番は少ないので、登場すると、読んでいるこちらも嬉しくなりました。2015/07/20