内容説明
将軍家茂の急逝、孝明天皇崩御。時局は一気に緊迫する。幕府再建か王政復古か、大政奉還か倒幕か。様々な思惑が交錯するなか、西郷隆盛は武力倒幕を断行。官軍の参謀として東征を指揮。最小限の戦禍で戊辰戦争を勝つことに苦心しつつ、ついに維新の難事業を成し遂げる。だが、新政府での栄達を望まず、薩摩に帰郷してしまうのだった。明治維新の立役者、その半生を描く大河小説、いよいよ佳境。
著者等紹介
津本陽[ツモトヨウ]
1929年3月23日和歌山市生まれ。東北大学法学部卒業。78年『深重の海』で第79回直木賞を受賞。95年『夢のまた夢』で第29回吉川英治文学賞を受賞。97年紫綬褒章、2003年旭日小綬章を受章。05年菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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姉勤
27
岩倉具視。時流と諸侯の思惑、そして掌中の玉、明治帝を駒として揃えるも、薩摩という大駒を動かすには「西郷」を納得させなくてはならず。理や情でなく、人々への思い、すなわち義によって西郷は動き、王政復古、大政奉還へと。維新は成り、立役者でありながら、権勢を嫌い野に下った西郷。多くの血を流した怨みと悲しみ、それを屈服させた明治維新という大義が、新政府の強者の傲慢と濫用によって、新時代への叛意に変わっていく。未来への抵抗。士(さむらい)という旧人種の起こす劇風によって、戴かれた巨大な風車が回り出す。2018/01/10
ナナメ
1
人望厚き英雄の切なき終焉に悲哀を感じます。避けられたはずの悲演を自身ですら、指をくわえて見過ござる終えない心情には、諦めにも似た共感が寂心を喚びます。2014/10/28