内容説明
新彊ウィグル自治区のウルムチで、中国からの分離独立を求めるイスラム系過激派による自爆テロが起きた。主犯格の少年は、かろうじてカラコルム山脈を越境して逃亡を計る。少年の妹も、ある密命を帯びて故郷を離れ、遠い上海へ身を潜める。それは、来るべき中国内乱への序章に過ぎなかった―。上海で実際に起きた事件を下敷きにした話題作を、大幅改稿して贈るスペクタクル・ロマン。
著者等紹介
春江一也[ハルエカズヤ]
1962年外務省入省。68年チェコスロバキア日本国大使館に在勤中、「プラハの春」の民主化運動に遭遇。ワルシャワ条約軍侵攻の第一報を打電する。その後、在東ドイツ大使館、在ベルリン総領事館、在ジンバブエ大使館、在ダバオ総領事館に勤務。在外勤務当時の体験を基にした『プラハの春』でデビュー、反響を呼ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キューポップ
43
新疆ウィグル自治区での爆弾テロ。うら若き少女が実行犯。少女と将来を約束していた少年は逃亡し、アメリカ大統領補佐官コンディの指示を受け大企業のエグゼクティブの地位を得て動く。少年の妹・ライラは監視の目をかいくぐり上海に紛れ込む。文革、ウィグル族への圧政、天安門事件、同時多発テロと私が読みたくなるwordが目白押しだが、駆け足で物語は進む。上海総領事館にてノンキャリアの電信員として従事する香坂はライラと運命的な出会いをする。 中国で外交官がウィグル人と接触。危険な展開が目に見える様だ。2021/02/07
湖都
17
21世紀初めの上海を舞台に、ウイグル人の独立や中国共産党の暗躍、はたまた9.11まで、様々な人物の視点から描く物語。主人公は大使館の電信担当官。その恋人はウイグル人テロリストを兄に持つ娘。2人はそれぞれの立場がありながらも惹かれあい、やがて娘は大義のために男の元を去る…。全体的に『プラハの春』を彷彿とさせるが、時代設定が身近であるためかこれはこれで面白い。そして、娘をつけ狙う公安局員(これもどこかで…)の蘇の「殺(シャー)」という決め台詞が猫の威嚇にしか思えなくて気になりすぎる。2020/02/13
びぃごろ
12
ずっと積読だったけれど、読み始めたら引き込まれるいつもの春江さんでした。時期は9.11を絡めかなり現代に。上海日本総領事館員の実際の事件を下敷きにしたフィクションだが、中国は近年でもこうだったの?と驚かされる・・・哀しい予感の下巻へ。2018/10/30
くみくみ
7
史実を元にした小説は興味深い。知識を得ることが多い。下巻が楽しみ。終わり方が気になる。2022/05/31
yumin
4
かなりの時間をかけて 上巻読了。読みやすさは最初の「プラハの春」に比べると格段に良くなっている。内容もかなりおもしろい。2018/10/11