内容説明
下町の救命センター。不測の事故や予期せぬ発作で、瀕死の状態に陥った人間の、救命と社会復帰のため、24時間態勢で最善を尽くす医療現場である。生死の境目にある患者と、突然のことに戸惑う家族。まざまざと見せつけられる生身の人間の強さと弱さ、怒りと諦め、悲しさ…。患者の高齢化、人材の不足など様々な問題を抱える現場を知り尽くした医師が、死生観を問う。ヒューマン・ドキュメント。
目次
救命センターからの手紙、再び
春愁
疑念
納得
逡巡
錯誤
著者等紹介
浜辺祐一[ハマベユウイチ]
1957年兵庫県生まれ。81年東京大学医学部卒。東大病院救急部を経て国立水戸病院外科に勤務。85年救命救急センター開設と同時に、都立墨東病院へ。現在、救命救急センター部長。99年、『救命センターからの手紙』で第47回日本エッセイスト・クラブ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zero1
53
医療は人をどれだけ幸福にするか?東京の下町にある救命センターにはいろんな患者が来る。自殺に虐待が疑われる子ども。名前も分からないホームレスに特養ホームの高齢者。手術の同意については著者だからこその説得力がある。結果は同じでもプロセスが大切。600万円の医療費をホームレスに使うのは無駄?シリーズになっているが、どこから読んでも大丈夫。解説は養老孟司。なぜ本書に感動するか述べている。薄いが多くのことを考えさせられる内容。レビュー20件は実にもったいない!2019/08/16
るっぴ
28
下町の救命センターで救急医療の最前線に立つ医師と看護師の話。救命医療で、手術しても植物状態になってしまうだろうという患者を手術するのか、しないのか? 考えさせられる。2016/05/10
さきん
23
多忙な救命センターに携わる医者の手記。手術しても植物人間が確実なケース、せっかく凄い手術をしたのに、自殺されてしまう事例、虐待疑惑が濃厚なのに中々踏み込めない現状。植物人間状態によって発生する莫大な医療費など。2017/03/16
タルシル📖ヨムノスキー
20
例えば何らかの事故で負傷した患者が救急車で救命センターに運び込まれる。医師・看護師は最善を尽くしその命を救う。そして助かった患者とその家族は笑顔で病院を後にする。なんてドラマのような場面はあることにはある。でも多分一握り。現実はなかなか世知辛く、助からない命がほとんどで、命を取り留めたとしてもいわゆる植物状態ということも往々にして起こる。これが医療の現実。もし自分の家族が事故に遭い、「手術することで命は取り留めるかもしれないが、植物状態になるかもしれない」と言われた時、自分はどういう判断をするだろうか。2024/10/31
いち
12
前回読んだ作品とは一風変わって今回は、中編もの。本書を通して感じたのは死との向き合い方。誰もが人は死ぬものだと思っているがいざ、死が身近なものとなると当惑してしまう。死を受け止め切れず、そのはけ口として誰かに責任を押し付ける。患者さんの死を家族が受け入れられるように全力を尽くしてあたり、納得して死を受けとめてもらえるようにするのが医師の役割だという話が印象的でした。死生観について改めて考えさせられる1冊でした。2018/04/17