内容説明
ミャンマー北部、反政府ゲリラの支配区・ワ州。1995年、アヘンを持つ者が力を握る無法地帯ともいわれるその地に単身7カ月、播種から収穫までケシ栽培に従事した著者が見た麻薬生産。それは農業なのか犯罪なのか。小さな村の暖かい人間模様、経済、教育。実際のアヘン中毒とはどういうことか。「そこまでやるか」と常に読者を驚かせてきた著者の伝説のルポルタージュ、待望の文庫化。
目次
第1章 アヘン王国、ワ州
第2章 手探りの辺境行
第3章 アヘンとワ人
第4章 ゴールデン・ランドの草むしり
第5章 「アヘン=モルヒネ化計画建白書」
第6章 白いケシと緑の軍服
第7章 最後に残された謎
著者等紹介
高野秀行[タカノヒデユキ]
1966年東京都生まれ。早稲田大学探検部当時執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。2006年『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
465
これまでに読んだ(まだ12冊目だが)高野氏の著作の中では最も重要かつ充実している。高野秀行氏ビルマの山岳部シャン州のさらに辺境にあるワ州の村に7か月間滞在した渾身のルポルタージュ。そこは、かのゴールデントライアングルの真っただ中。20年も前のものだが、資料的価値においても第1級。彼の真の実力を知ることができる貴重な本。ワ語(ムイレ方言)を習得し、普通にそこで暮らし、ケシを栽培し、村人たちと苦楽を共にし、涙して別れた高野氏にとっての望郷の地だ。抱腹絶倒しながら、感涙を禁じ得ない稀有な書だ。2017/06/13
のっち♬
207
ケシ栽培の全工程を体験しようと1995年10月に黄金の三角地帯の村へ潜入した著者。到着早々素性を晒し、方言矯正をやらされたり、モルヒネ計画を発案したりと今回も人柄がよく出た逸話が満載。文明度は低くとも礼節を重んじ敬虔で勤勉な住民はどこか郷愁や親近感を覚えさせる。怒られる程に心身諸共どっぷり中毒に浸かる様は読者の興味を唆ることだろう。ワ州の隔絶とアヘン依存経済の理不尽な背景や人間劇とローテしながらのリズミカルな構成も流石。クンサー投降が重なったのもまた感慨深い。彼のスタンスが最もハードに貫かれた貴重な一冊。2022/03/19
読特
132
湿地を行く。水芭蕉が咲いている。のっぺり気分で、細い板の上をどこまでも・・・ここでそれを吸うのはご法度。善悪の彼岸には渡れない。体験できないことを読書で味わう。アヘン作りは草むしり。人の手がないと育たない”人間依存植物”。ミャンマーの東のワ州。ゴールデントライアングル。島国日本。国の形は当たり前にある。多くの民族が雑多に暮らす大陸。多数のビルマ族が少数民族をまとめてはたした独立。自治を貫きたいワ族。経済を担うアヘン。早々にはなくせない。滞在は1995年。世界は複雑。この地域の事情も相当変わっているだろう。2023/11/16
崩紫サロメ
113
ミャンマーのアヘン生産地帯に7ヶ月間滞在し、現地のワ人と共にケシを栽培し、アヘン中毒にもなったという世にも珍しい体験を綴る。アヘンを吸った時にどういう状態になるかを詳細に語っており、なかなか衝撃的だった。この体験は1995年のものであるが、文庫版あとがきによると「準原始共産主義社会だったワ州も大きく様変わりワ軍はミャンマー政府に従属し、中国の影響を更に強く受けるようになっているという。2020/09/17
TATA
98
アヘン栽培を目的にビルマ北部のゴールデントライアングルに単身潜入する筆者。そこは反政府ゲリラの支配する土地だった。濃厚な生活の様は紀行文として秀逸、政治的ルポルタージュの側面もあり読み応えは抜群。誰もやらないことをやってのけ世界的な第一人者になる、そこは素直にリスペクトすべきなのですが、アヘンにあっという間に溺れ、転落していくところはホント、リアル。恍惚感と禁断症状も存分に記載されてて、よーく分かりました、やっぱりアヘンは「ダメ、ゼッタイ」。2019/05/20