内容説明
何なんだこれは!天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集が「1」、「2」に分かれて、ついに文庫化。双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され…(「カザリとヨーコ」)、謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?(「SEVEN ROOMS」)など、本書「1」には映画化された5編をセレクト。文庫版特別付録として、漫画家・古屋兎丸氏との対談も収録。
著者等紹介
乙一[オツイチ]
’78年福岡生まれ。17歳の時、「夏と花火と私の死体」で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、デビュー。ファンタジー・ホラー小説界の若き俊英として活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナルピーチ
300
乙ワールド全開の短編集。5話の作品が収録されているが圧倒的な恐怖と遺憾を覚えるのは「SEVEN ROOMS」これはもう想像しちゃいけない。過去に映像化されているみたいだがこんなグロいの動画で流していいのだろうか、と思いつつもやっぱり読み進めてしまった。唯一気持ちを安らぎさせてくれたのは「陽だまり詩」切なさは残るものの安心して読める物語。残りの「カザリとヨーコ」「そ・ふぁー」「ZOO」も乙さんらしい仕掛けのある作風。総称して全編通して満足の一冊!2020/10/26
yoshida
239
これが乙一の持つ独自の世界観なのだと思う。不条理な短編を5編。「カザリとヨーコ」、「陽だまりの詩」が特に印象深い。まず「カザリとヨーコ」。中学生のヨーコは母と双子の妹であるカザリと暮らす。母の異常なまでのヨーコへの虐待とカザリへの偏愛。ある事件をきっかけに家を脱出するヨーコ。ラストのヨーコの心の声が、新たな人生を切り開く力を感じる。「陽だまりの詩」は手塚治虫の「火の鳥」を連想させた。ロビタやムーピー、タマミだ。徐々に生きる歓びや感情を得ながら、一人で生きる運命が哀しみを呼ぶ。独自の世界観に興味深く読めた。2017/12/03
おしゃべりメガネ
233
とても同じ作者が書いた作品とは思えないくらい、あらゆるカラーの短編集です。本当に作者さんは奇才だと改めて思いました。全体的には正直、明るい仕上がりの物語はなく、どの話もダークな締めで乙一ワールドを十分に味あわせてくれます。他の方のレビューにもあるように『seven~』は別格ですし、個人的には『so-far』が好きなカラーでした。正直、グロい作品もあるので、万人に楽しんでもらえる作品ではないかもしれませんが、1度は何かの作品を是非手にとっていただきたい、そんな作家さんです。基本的にどの作品も読みやすいです。2013/11/21
ミロリ
198
『カザリとヨーコ』ヨーコの生命力が好き。アソを携え、最後の一言で希望が見える。『SEVEN ROOMS』怖い。あの現場にいたくない。みんな自殺をせずに死期が訪れるのを待つって凄い……実際に体験してみないと心理が分からない。姉弟が賢くて良かった。『SO-far そ・ふぁー』一番好き。主人公がかわいそうで切ない。両親の演技が上手かったのか謎だけど、異常な状況が続くと相当ダメージあるものなんだろうな。『陽だまりの詩』ずっと繰り返すのだろうか。『ZOO』遊びに付き合わされるガソリンスタンドの主人が気の毒。2014/07/13
NADIA
192
不思議な感覚の5編の短編集。ホラー要素が強いもの、SFチックなもの、ミステリ風なもの。どれも共通するのは「静謐」。極限の状況の物語さえ、しんと研ぎ澄まされた静寂を感じる。この中では「カザリとヨーコ」が一番気に入った。理由は不明だが、一卵性双生児なのに姉のヨーコだけ母親に虐待されている。しかしその仕打ちを「こんなもんだ」とひがむことなく明るく受け入れているヨーコが妙に頼もしい。そして、一気に大逆転したようなラスト。喝采ものだった。SEVEN ROOMSも普段特に感じない姉弟愛を見せてくれる良作。怖いけど。2018/02/06