出版社内容情報
店主の腕に惚れた大物俳優や政財界の名士が通いつめた伝説の床屋。僕はある事情から海辺のその店を訪れる…「海の見える理髪店」他、全六編。喪失と希望を描く心に沁みる短編集。(解説・斎藤美奈子)
内容説明
店主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが…「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は…「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族小説集。直木賞受賞作。
著者等紹介
荻原浩[オギワラヒロシ]
1956年埼玉県生まれ。成城大学卒業後、コピーライターを経て、97年『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞受賞。2005年『明日の記憶』で第18回山本周五郎賞受賞、14年『二千七百の夏と冬』で第5回山田風太郎賞受賞。16年『海の見える理髪店』で第155回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ノンケ女医長
307
懸命に生きる、理髪店の店主。時代の影響を受け客が減っても、信念を貫こうとした。惨劇が起きてしまい、罪を償った。理容師の資格があるおかげで、収監中に重宝され、出所後の就職も早かった。資格の有無だけではなく、店主の真面目な人間性に、よりいっそう磨きがかかったのだろうと思う。客に向ける完璧な微笑みの裏には、苦難を受け続け、乗り越えて来た人特有の強さが隠れていそう。理髪店には行ったことがないけれど、店主と会ってお話を聞けたらいいなと思った。ハードカバーと文庫本で、表紙に描かれた理髪店が違う。私は前者が好き。2022/11/25
エドワード
275
ある日訪れた男性に、自分の来し方を語り始める理髪店の老主人。「実は私、人を殺めたことがあるんです。」男性は何者?頑固で強気な母が苦手だった娘は、老いた母に何を思う?父の形見の時計の修理に、会社人間だった父を思う息子。肉親への切ない想いが凝縮された短編たち。「時のない時計」という題が秀逸。携帯の無い青春の手紙が夫婦仲を修復する。突然現れる謎の手紙は何?悲哀感漂う前半から一転、亡き娘に扮して成人式に臨む夫婦、「成人式」が荻原浩さん感満載だ。孤独な少年少女の冒険、不安な未来を信じよう。空は今日もスカイだ。2019/09/02
あきら
258
めちゃめちゃ素敵な話でした。 アップから段々引いていくような物語の構成で、すべての物語で冒頭からつかまれました。 なかでも、遠くから来た手紙、成人式が本当に感動しました。 じわっと心に沁みわたる、素敵な余韻が残ります。2022/07/31
shinchan
252
荻原浩さん初読みでした。デビューされて19年目での直木賞受賞作品です。ほかの作品も気になり続けていましたがついに手にしてみました。「面白かった」が素直な感想です。「海の見える理髪店」は、美しい内容と想像し読んでいましたが何と...!!! 萩原さんの作品ジャンルはかなり広いらしいですね・・・?2020/07/11
ゴルフ72
245
6つの短編集「海の見える理髪店」が良い!店主が静かに語る自分の人生は自分の勝手な思いながら浅田次郎先生の文章を思い出す。「成人式」は娘の死の悲しみから中々抜けえきれない親の様子を切なくしかし成人式に自ら出るという形を上手に描いている。荻原作品はほっとさせてくれる。2019/06/04