出版社内容情報
白虎隊士でひとり蘇生し、行き場を失った貞吉を楢崎頼三が長州へ誘う。敵地で生きようともがくが…。明治期、生き残りと謗りを受けた男の苦難の人生を誇り高く描く書き下ろし歴史小説。(解説/中村彰彦)
植松 三十里[ウエマツミドリ]
著・文・その他
内容説明
戊辰戦争に参戦した会津藩白虎隊士・飯沼貞吉。仲間達と自刃したが、唯ひとり蘇生する。江戸の謹慎所で、生き残りと謗りを受ける貞吉に、捕虜受け取り責任者楢崎頼三が、自分の故郷長州へ行こうと誘う。会津を失った貞吉は、敵だった長州へ楢崎と旅立つが…。異郷でもがき苦しみながらも、恩愛を知り、明治の日本人として誇り高く生きた実在の男の波乱の生涯。幕末維新に新しい光を当てる傑作歴史小説。書き下ろし。
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
静岡市出身。昭和52年、東京女子大学史学科卒業後、婦人画報社編集局入社。7年間の在米生活、建築都市デザイン事務所勤務などを経て、フリーランスのライターに。平成15年「桑港にて」で歴史文学賞受賞。平成21年「群青 日本海軍の礎を築いた男」で新田次郎文学賞受賞。同年「彫残二人」で中山義秀文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
210
白虎隊唯一の生き残りの飯沼貞吉の生き残り後の話!生き残ってしまたゆえの苦悩と葛藤に、思わず感情移入してしまいます。武士または兵士としての心があれば、さぞ生き恥だったんでしょうね。しかし出会った男達が貞吉の苦悩と葛藤を消してくれる!これはまさに運命としかいいようがない。長い歳月が、貞吉の苦悩と葛藤を緩やかに解決させてくれるんですね。そして、子を思う親の気持ち…。終盤は涙が溢れましたね。当時にタイムスリップして、飯沼貞吉という一人の男の生き様を、影からこっそり見守ってしまう、そんな錯覚に陥りました。2019/01/10
ケイ
152
自決した白虎隊15名。死ねなかった一人。自決未遂となり助けられた少年。のちに彼が語ったから、白虎隊の最期の模様がいまに伝えられている。彼に手を差しのべる人は、なぜ何人もいたのか。駿河で彼が聞く答えとなる言葉が作者の創作だとしても、そのような気持ちでいた人たちはたくさんいたに違いない:会津には申し訳ないことをした、と。維新は、大きな大きな波で、放出されたエネルギーは凄まじく、勝者ですらその波にのまれ揉まれた。飯沼貞吉、よくぞ生を全うした。2021/07/14
Aya Murakami
115
フユイチ2018年の集大成対象本。 一人生き残った白虎隊が過酷な人生を生き抜く話。主人公の生きざまもみじめながらかっこいい感じを受けましたが主人公を助けた長州人もなかなか名言遣いでした。「ならぬものはならぬではダメ。自分の頭で考えるのが大事」。他人の意見に左右されてばかりではダメなのはいつの時代も同じなのかも?それにしても自殺した人ばかり美談にされて生き残った主人公が忘れ去られるのは悲しい現実。生き抜くことはそんなにみじめなことですか?2019/04/03
ゆみねこ
95
白虎隊のただ一人の生き残り、飯沼貞吉。会津を出て仙台でその生涯を閉じたことは知っていましたが、長州で2年を過ごしていたことは初めて知りました。異郷でもがき苦しみながら周囲の期待に応えた貞吉の尊い生涯。感動の一冊です。2019/02/13
とし
86
ひとり白虎 会津から長州へ。戊辰戦争の白虎隊でただひとり生き残り数奇な運命を辿った実在の人物飯沼貞吉、辛い思いを一生持ち続け生きなければならない人生胸迫る物語りでした。飯森山に登つてみたいと思う。2020/01/16