出版社内容情報
首里士族・喜屋武家の三男として生まれた朝徳は父から手(空手)を習い、小柄ながら頭角を現す。やがて朝徳は琉球から東京に移り住み、その違いに戸惑いつつ、空手の伝道に乗り出し──。(解説/細谷正充)
内容説明
明治初期、首里士族である喜屋武家の三男として生まれた朝徳。体の小さな彼は、従兄の本部朝基と相撲をしても負けてばかりだったが、父の教える手に惹かれて鍛錬を重ねる。激変する時代のなか、東京での勉学生活の後に沖縄へ戻った朝徳は更に手の修業を積み、やがてその伝道に力を注いでゆく―。平和は武によって保たれる。琉球が生んだ伝説の唐手家の生き様を描き出す武道小説。
著者等紹介
今野敏[コンノビン]
1955年北海道生まれ。上智大学文学部在学中の78年に「怪物が街にやってくる」で第4回問題小説新人賞、2006年『隠蔽捜査』で第27回吉川英治文学新人賞、08年『果断 隠蔽捜査2』で第21回山本周五郎賞と第61回日本推理作家協会賞、17年「隠蔽捜査」シリーズで第2回吉川英治文庫賞を受賞。SF、伝奇アクション、ミステリなど幅広い分野で活躍。著書多数。空手道「今野塾」を主宰する武道家でもある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
booklight
25
沖縄空手の喜屋武朝徳を基にしたノベライズ。沖縄に古くから伝わっていた「手」が、戦前戦後でどのように学ばれて、どのように伝えていったかがよくわかる。また空手道場を主催している筆者だけあって、格闘シーンでも、細かい技の動きのリアリティさがあるだけでなく、精神的なところまで書かれていて面白い。後年名人と呼ばれる人も若いことは道に迷ってグダグダしているところは、小説的には中だるみではなるが、リアリティがあって小説とは違う面白さを感じた。空手は身体性を伴った文化だし、時代・生活とともに歩んでいくんだなと再確認。2023/11/12
ひさか
22
琉球新報2013年2月5日〜9月30日の199回連載のものを2014年9月集英社刊。2017年12月集英社文庫化。今野さんの武道家の伝記話は面白い。主人公がきょとんとする場面が何回かあるが、ここいらの表現が良い。主人公や、登場する人たちに魅力があり、楽しい。2025/03/30
よしお
8
実在の人物をモデルにしたお話。作者の武道のお話、好きだなあ、2018/07/30
Hide
8
少林流の祖である喜屋武朝徳の話。今野さんの空手塾も、この流派になるのかな?他の今野さんの沖縄空手の作品に比べ、格闘シーンは少なかった。でも今野さんのこの作品に対する情熱がひしひしと感じられた。沖縄空手をやってみたくなってしまった。面白かった。2017/12/04
黒い鴉
7
琉球空手の祖の1人、喜屋武朝徳先生の物語。同じ著者の「義珍の拳」と共に伝統空手を習った経験のある人にはとても面白く、興味深い読書なのではないか。特に「型」の存在。誰もが1度は思う、型とは何か、どう使うのかという問いへの考察は、まるで教本の様に夢中に読んだ。また琉球空手では必ず言われる「ガマク、ムチミ、チンクチ」の解説ともなる場面も面白かった。そして何よりも、無口で厳しいながらも深く結びついていた朝徳先生と父、一目惚れしてしまった屋良伝道の娘だった妻、愛娘との各場面は本当に素敵で、本作を深くしていると思う。2018/07/13