出版社内容情報
正体不明の“自称"大名、有月と、泣き虫の村名主、吉之助。そして有月が飼っている勇猛果敢な鶉の佐久夜。二人と一羽が江戸を揺るがす事件に挑む。人気作家・畠中恵、集英社文庫初登場。(解説/ミムラ)
内容説明
泣き虫でへっぴり腰の吉之助。東豊島村の豪農で名主の彼は、ある日、辻斬りに襲われたところを、一羽の鶉とその飼い主に助けられる。飼い主の名は有月。自称大名で、吉之助とはその昔、同じ道場に通った仲だった。一方、江戸では、大名に金を貸す大名貸しと呼ばれる豪農らが、次々と急死。有月が真相を探ることに…。二人と一羽の異色トリオが、幕府を陥れる謀略に挑む!新たな畠中ワールドの開幕。
著者等紹介
畠中恵[ハタケナカメグミ]
高知県生まれ、名古屋育ち。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。16年「しゃばけ」シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。江戸もののほか、明治時代や、現代が舞台のシリーズと、幅広く執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Aya Murakami
127
ナツイチ2018ナツイチ2019 御吉兆…。うずらの鳴き声として登場していましたがめでたい鳴き声ということでうずらが飼育されていたのは歴史上の実話のようです。歴史時代小説の方って本当によく調べて書いているのですね。 武士の身分の売り買い…。買ったはいいものの日ごろの切磋琢磨を欠いた身分というのは脆いものですね。上の身分になればそれにふさわしい作法というものが求められるというのは今も昔も変わらない。2019/11/20
ぶち
101
妖がまったく登場しない、シリアスでいて痛快な時代劇です。主役は、若くして隠居した大名・有月と豪農で泣き虫の吉之助。そして、忘れてはいけないのが、勇猛果敢な白い鶉の佐久夜。有月が飼っている鶉です。"御吉兆ーー!"と鳴いたり、"ぼぼぼ" と鳴いたり、座敷を歩き廻ったり、へろへろ飛んだり、不忍の池に落ちてみたり....この佐久夜の振る舞いでシリアスな場面も和んだものになっていきます。江戸を揺るがす天下分け目の大事件になりそうなところを、皆の活躍で解決していくのですが、ちょっぴり切ないものも感じる結末でした。2020/03/02
れみ
98
豪農で名主の吉之助は辻斬りに襲われたところを鶉(うずら)とその飼い主に助けられたのをきっかけに、大名に金を貸す豪農たちが相次いで急死するという不可解な出来事に巻き込まれていく…というお話。6つのお話のなかで起こる事件や困り事がこの物語全体を貫く大きな事件と繋がっているという構成で後半に行けば行くほど先が知りたくてどんどん読めてしまった。事件はなんとか決着をみたけど巾着鶉の佐久夜の飼い主・有月と加賀守にはさらなる因縁がありそうだなあとも思うし、この先続編とか出るならまた読みたい。2018/09/23
初美マリン
94
かつての道場仲間、武士も町民も百姓も二男三男ノ冷や飯食いばかり。そこで起こるミステリーと青春の匂いをさせての時代劇。大殿の飼っているうずらが賢くてかわいい。なんともいえない味付けであった。2024/11/11
sin
87
辻斬りに遭遇した主人公を助けたのは身分は違えど昔の道場仲間達、今も変わらぬ泣き虫な彼の、けれども昔と違う立場から昨今の事件に絡んで関わりあいを持つことになってしまい、それは思わぬ切り口から幕藩体制を揺るがす企みに繋がっていく…作者お得意の連作ミステリです。昔馴染みの携えた巾着に入った鶉が愛くるしくて「御吉兆ーっ」の鳴き声が微笑ましく、暗い影を落とす事件の最中ながらユーモラスな作風が魅力的です。2018/06/14