出版社内容情報
旧満州に設立された満州建国大学。「五族協和」を掲げ、五つの民族の若者達がともに青春を過ごした。満州国崩壊後、卒業生はどのような戦後を送ったのか。その実態に迫るドキュメント。(解説/梯久美子)
内容説明
日中戦争の最中、満州国に設置された最高学府・建国大学。「五族協和」を実践すべく、日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシアから集められた若者たちは6年間、寝食を共にしながら国家運営の基礎を学んだ。そして敗戦。祖国へと散った彼らは帝国主義の協力者として弾圧を受けながらも、国境を越えて友情を育み続けた。スーパーエリートたちの知られざる戦後。第13回開高健ノンフィクション賞受賞作。
目次
序章 最後の同窓会
第1章 新潟
第2章 武蔵野
第3章 東京
第4章 神戸
第5章 大連
第6章 長春
第7章 ウランバートル
第8章 ソウル
第9章 台北
第10章 中央アジアの上空で
第11章 アルマトイ
著者等紹介
三浦英之[ミウラヒデユキ]
1974年、神奈川県生まれ。京都大学大学院卒業後、朝日新聞社に入社。東京社会部、南三陸駐在、アフリカ特派員などを経て、現在は福島総局員。2015年、『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第13回開高健ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
116
満州国の最高学府として設立された建国大学。五族協和の実現の為に、日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアから驚異的な倍率を突破し入学した学生達の戦後を記すノンフィクション。異なる民族の学生が議論し生活する。そこに生まれる繋がりは、五族協和と言うよりは、異民族でも個人同士ならば分かりあえることを示している。国家レベルになれば、様々な国益が絡み理解し合うことが難しくなる。それが現実だろう。学生達の志の気高さ。敗戦により待ち受ける予想だにしない環境の激変。歴史は続いていく。歴史を知ることの大切さを改めて認識した作品。2019/06/29
ちゅんさん
50
かつて満州国に"五族協和"を理念に日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシアから優秀な学生を選抜し将来の満州国を担う人材育成目的に建国大学というエリート養成機関が存在した。そんなエリート達も戦後、時代の波に飲まれ不遇な人生を送ることに。著者は彼らを取材するためアジアの国を飛び回りながらその証言を集めていく。しかし彼らがかなり高齢なことやそのお国(中国)元建国大生という特殊な事情がありなかなかうまくいかない。それでもここまで調べて読ませる作品に仕上げた著者の筆力と情熱は賞賛に値する。貴重なノンフィクション本2022/10/27
hatayan
43
将来の満州国の国家運営を担う人材を育成するために設立された「満州建国大学」。民族共和を掲げ、日本人だけでなく朝鮮人、中国人、ロシア人なども学生として共同生活。出自に関係なく言論の自由が認められる環境が用意されていましたが、終戦と同時に消滅。不利益を恐れて大学にいたことを隠す卒業生が多かったといいます。失われた記録を求めて、著者は生き残ったOBに国を跨いでインタビュー。政府の掲げた理想と矛盾に学生が悩み苦しんでいたこと、学内では教養主義が重視され手厚い教育が受けられたことなど、歴史の影を浮き彫りにします。2019/08/29
アナクマ
35
矛盾と暴挙に満ちた新生国家、満州を運営するための人材育成機関「建国大学」に集った五国のエリートたち。その青春と戦後を描く。国々の思惑はさておき、皆で生きるという尊い理想の煌めきを内包したノンフィクション。◉著者の熱意ある誠実な取材と、細くても結ばれた同窓生達の思いがあいまった良品。◉もうすぐ失われる「五族協和の現場」の肉声から、私自身の戦史・教育史観を上書きされる可能性を感じることができ、本作を足掛かりに苦手な現代史に分け入る動機をもらった気がします。2018/01/20
まると
27
民族協和を掲げた満州国に建国大学という最高学府が存在し、民族の垣根を超えて優秀な学生が結集したという事実だけでも興味深く、著者のテーマ選択のセンスの良さを感じた。日本で言論の自由が失われつつあったあの時代に、民族間の対立を承知の上で切磋琢磨したというのもすごいことだ。あの辻政信が教官となり学生に慕われていたというのも意外だった。石原莞爾の提唱だけに、満州国と同様、大学も極めて実験的だったのだろう。卒業生が亡くなる前に取材した著者の功績は大きいが、それぞれ短編とせず、もっと書き込んでもよかったのにとも思う。2024/05/18
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