出版社内容情報
1932年、喜劇王チャップリンが来日した。歓迎ムードの裏でひそかに練られる暗殺計画。彼の命を救うため、安吉一家が動き出す! 仁義を重んじる伝説の夜盗たちの痛快ピカレスクロマン。(解説/水谷 豊)
浅田 次郎[アサダジロウ]
内容説明
チャールズ・チャップリンがやってくる!!昭和七年五月、日本中が彼の来日に沸くなか、安吉一家の耳に驚くべき噂が飛び込んできた。チャップリン暗殺―。信念を持つこの稀代の芸術家を殺させてなるものか。世間を混乱させることなくテロリストの魔の手を振り払うため、いなせな夜盗たちが東京の街を所狭しと走り回る。表題作ほか全六編を収録した大人気“天切り松”シリーズ待望の第五巻。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で吉川英治文学賞、10年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞を、それぞれ受賞。15年に紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
177
これも、陰陽師と同じく14年初頭に出ているハードカバーで読んでいるのですが、手元に残す本は文庫本なので購入しての再読です。浅田さんの作品のなかのシリーズでは現在も続いているもので大好きなもののひとつです。6作がおさめられていていつもどこかでほろりとさせてくれるのが浅田節ですが今回も健在です。とくに表題作が映画の好きな私にとっては一番の作品だと感じています。2016/10/17
kinupon
110
もっとこのシリーズが続きますように。粋でいなせな主人公とそれを取り巻く多士済々な人たち。誰もが主人公にとして生き生きと描かれています。2018/01/31
佐々陽太朗(K.Tsubota)
105
全六夜の闇がたり。私の好みは「第二夜・月光価千金」。振袖おこんがめったやたらとカッコイイ。安吉への思い断ちがたく、切ない。ふたつめ「第四夜・薔薇窓」。浅田氏が描く薄幸の女性は、いつだってそっと抱きしめたくなる。あぁ、もう目頭が・・・。さらにもう一つ「第五夜・琥珀色の涙」。こいつはもうダメです。通勤バスの車中でウッ!っと唸った瞬間、涙がボロボロ。かろうじて嗚咽をもらすことだけはこらえたが、溢れる涙を止めることは出来なかった。いつものことだが浅田文学への心地よい(しかし少々みっともない)敗北でした。2016/12/23
となりのトウシロウ
95
天切り松シリーズ5作目。目細の安吉親分一家、親分をはじめ、黄不動の栄治、振袖おこん、説教の寅弥、書生の常次郎の昭和初期の活躍6編を松蔵が語る。そこいらのコソ泥とは全く違って、任侠の世界の仁義に生きる人達が正義を振りかざす心意気が描かれていても、どのお話も良かったのですが、特に『琥珀色の涙』栄治の育ての親である根岸の棟梁と栄治の話にジンときて、『箱師勘兵衛』の寅弥がカッコ良すぎてシビれます。やっぱり、このシリーズは面白いです。2025/05/17
いこ
95
「天切り松シリーズ」最終巻である。読み終わるのが勿体ない程、良い話ばかりである。この本が最初に出てから丁度十年経つけれど、浅田次郎さんには是非とも続きを書いて頂きたいと切に願う。「松公、これがせんに話した、れえむれえとだぜ」これは「ライムライト」のことを言っているのだけど、話している優しい兄ィの心を考えると、この変な江戸弁に泣かされる。どの巻でも、こんな江戸弁と、かっこいい男女の粋な振舞いを、思う存分堪能させてくれた浅田さんには感謝しかない。恐らくこの本は、私の人生の中で何度も読み返す本になるに違いない。2024/06/29