出版社内容情報
虐待による心の傷と闘う子どもたち。そして、彼らに寄り添い、再生へと導く医師や里親たち。家族とは、生きるとは? 人間の可能性を見つめる第11回開高健ノンフィクション賞受賞作。(解説/是枝裕和)
内容説明
ファミリーホーム―虐待を受け保護された子どもたちを、里子として家庭に引き取り、生活を生にする場所。子どもたちは、身体や心に残る虐待の後遺症に苦しみながらも、24時間寄り添ってくれる里親や同じ境遇の子どもと暮らし、笑顔を取り戻していく「育ち直し」の時を生きていた。文庫化に際し、三年後の子どもたちの「今」を追加取材し、大幅加筆。第11回開高健ノンフィクション賞受賞作。
目次
第1章 美由―壁になっていた女の子
第2章 雅人―カーテンのお部屋
第3章 拓海―「大人になるって、つらいことだろう」
第4章 明日香―「奴隷でもいいから、帰りたい」
第5章 沙織―「無条件に愛せますか」
著者等紹介
黒川祥子[クロカワショウコ]
1959年生まれ。福島県生まれ。東京女子大学卒業後、弁護士秘書、ヤクルトレディ、デッサンモデル、業界紙記者などを経て、フリーライターに。家族の問題を中心に執筆活動を行う。2013年『誕生日を知らない女の子 虐待―その後の子どもたち』で第11回開高健ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SJW
181
本当に起こった虐待の話なので、読むのを躊躇していたが目を背けてはいけないと自分に言い聞かせページを開いた。 ファミリーホーム(虐待を受け保護された子供たちを里子として家庭に引き取り、生活を共にする場所)を訪問し、被虐待児の今の様子と過去に受けた虐待を養母から聞き、驚きの実態が明らかになっていく。虐待を受けると生き抜いていくために自分を守ろうと心や精神が適応して発達障害、愛情障害など様々な障害を背負ってしまう。読むのは辛かったり涙してしまうが、少しでも障害の症状が改善して幸せな家庭に溶け込むことが2018/11/06
かなっぺ
128
虐待による子供への影響がいかに深いか。。虐待の後遺症がどのようなものかを知った。里親制度は知っていたが、ファミリーホームの存在を初めて知った。「解離性障害」「愛着障害」というものを学んだ。愛着障害による症状と、ADHDの特徴がら重なる事を知った。この本に登場してくるゆめちゃん、「広汎性発達障害」がある子。ゆめちゃん、殴られたり、蹴られたり、あんたなんか産まなきゃ良かったと言われたり、最終的には養育里親へ預けられる。私の幼い頃の嫌な記憶が蘇る。2017/04/20
しいたけ
121
単行本で読んであったのだが、内容を忘れていたこと、文庫版に3年後の子供たちが加えられていると教えて貰ったことで、慌てて手にした。一番の理由は、私も春からファミリーホームをはじめたということ。読めば蘇る憤り。そうだった。児童養護施設での虐待を理由に緊急一時保護した子どもの話に、以前も憤慨したことを思い出す。虐待の影響は凄まじく、寿命さえ縮めるという。その子らに関わる大人が、迷いジタバタするみっともなさに私は共感する。取り返しのつかない傷を子どもに負わせた前記の児童養護施設は、断じて仲間ではない。恥を知れ。2018/05/03
miww
111
虐待を受ける子に共通するのは感情を消すこと。それが乖離や発達障害に進行し、保護された後も虐待の傷跡はその子を大きく支配する。常に緊張を強いられ過覚醒の状態が続けばこころを病むのは当然。人間らしい生活習慣や安心できる場所を知らずに成長する事の恐ろしさを思い知らされた。我が子を虐待し続ける親に怒りが込み上げ、自分を守る術を持たない子供たちに心が痛む。2017/05/13
のんき
82
虐待を受けて、保護されて施設にいる子どもたちを里子として、引き取って家族として生活するファミリーホーム。そこで育て直しの生活を送る子どもたちのお話し。虐待を受けた後遺症は、簡単にはなくなりません。物を盗んだり、暴れたり、発達障害があったりと。子どもたちも苦しんでるけど、預かった親も大変なんだなあ。それがよくわかりました。子どもたちに笑顔になってほしいし、幸せになってほしいと祈らずにはいられませんでした。 2018/04/23