出版社内容情報
あなたは友が犯した過去の罪を許せますか。少年犯罪を償い出所した鈴木。住み込みの職場で仲良くなった益田は、あることをきっかけに彼の過去に気付き……。著者渾身の長編小説。(解説/瀧井朝世)
内容説明
あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか?埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり―。少年犯罪のその後を描いた、著者渾身の長編小説。
著者等紹介
薬丸岳[ヤクマルガク]
1969年兵庫県生まれ。2005年に少年法をテーマにした『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
757
先に読んだ二冊と比べても、段違いに面白い。面白いという表現さえ不謹慎呼ばわりされそうな内容。にも関わらず敢えて"面白い"という表現。解説のとおり、鈴木の内面描写は一切ないが、要所要所で作者が読者に見せたい"鈴木像"への誘導はしっかり為されており、益田や弥生が肝心な時に限って、やたら軽率な行動に出ることまで、結局、人工的な"小説世界"。しかし、その中で、圧倒的な品質と呼べる織り込み。「なんと言っていいかわからない」「感想が思い浮かばない」というレビューの多さが勲章がわり。『Aではない君と』も読もう。2018/07/01
nobby
381
自分の周囲に凶悪または破廉恥な“過去”があることを知った時、どう対するのか。夢中で読んだ後も答えなど出せそうにない。中盤からはもう崩れていく展開が分かりやすく切なく胸いっぱい。“罪を背負って生きる”難しさ。被害者の立場からすれば生きているだけでも憎いであろう。でも生きるに当たっては喜ぶ場面もあるだろう。それでも更生されたとする犯罪者を自分がどこまで受け入れられるのか、一言では片付けられない…こんな重いテーマでの600頁を一気に読ませる薬丸作品さすがだ。2015/12/13
トンちゃん
323
親友がが猟奇殺人犯だったら…という視点で描かれている小説。読者はどうしても酒鬼薔薇事件を思い浮かべてしまうでしょう。少年Aとしての鈴木のような性格であれば私なら親友であり続けるかもしれない。でも、現実的な反応は主人公たちのように距離を置こうとするのでしょう。 過去はどうやっても正当化できません。 作中に出てくる山内の息子の事件との対比が面白いなと。親友の過去に故意犯か過失犯のどちらかの事件があったとして、過失犯なら許されるのか…。もし、真摯に反省しているのなら許しわしなくても親友でいても良いのでは。2020/05/19
hit4papa
307
少年の頃に猟奇殺人を犯した過去を持つ、青年の物語です。いわゆる少年Aのその後を描いた作品で、彼が友と信じた同い年の青年との関係性が主軸です。人は自分の知人が殺人犯と知った時、どのような思いに囚われるのか。友情を、そして愛情を、それを知る以前と同様に持ち続けていくことができるのか。本作品は、著者がよく取り上げる少年犯罪や加害者の心の内をテーマとしています。消せない過去を持っていても、人は前を向いて歩いていく術はある。本作品は、こういうメッセージが込められていると思うのです。「友罪」は、良いタイトルだなぁ。2020/04/28
こーた
285
人は誰しも、触れられたくない過去というものを抱えて生きている。忌まわしい過去は隠したままにしておきたい。そうおもっている反面、一方では誰かに話を聞いてほしい、過去を洗いざらい打ち明けてしまいたい、という想いをいだいていたりもする。わたしは聞き役であるはずだった。なのにひとの大いなる過去と対峙したとき、思い出されるのはわたし自身の過去であった。相手の過去を暴こうとするあまり、木乃伊取りになって自分の過去が襲いかかってくる。ひとの物語を聞きながら、自分の過去に想いを馳せる。小説を読むのも似たようなものである。2018/06/14