出版社内容情報
両親から壮絶な虐待を受けて育った少年、北斗。初めて出会った信頼できる大人を喪ったとき、彼の暴走が始まる……。孤独の果てに殺人を犯した若者の心に切り込む、衝撃の長編小説。(解説/黒川祥子)
内容説明
両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め―。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。第8回中央公論文芸賞受賞作。
著者等紹介
石田衣良[イシダイラ]
1960年東京都生まれ。97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で第129回直木賞を、06年『眠れぬ真珠』で第13回島清恋愛文学賞を、13年『北斗―ある殺人者の回心』で第8回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
151
何とも胸が締め付けられるばかりで読了。幼少時からの虐待の様子をひたすら本人目線での描写はグロく生々しく、眉をひそめて度々空を見上げた。何より北斗がその要因を自らの非に探したり、「あの男の遺伝子だけは残してはいけない…」と自制するのが不憫でたまらない。ようやく見つけた休息の場も長く続かず、理不尽が重なって悲劇に向かうのは分かっていても切ない。まず“生きる”“愛する”当たり前に感じ得ている自分に感謝。「ただ抱きしめて欲しかった…」どれだけ哀しい渇望なのか…2016/05/11
takaC
131
あまり目にしない言葉だなと思いながら読んだが、これが「回心(かいしん)」なのね。振り返ってみると実はただ長いだけの話だったような気もする。2017/04/27
あすなろ
130
裁判長に北斗は感じた。大人が自分を受け入れてくれることへの驚きを。そんな想像及ばぬ北斗が描かれた580頁超の力作を、北斗若しくは北斗への第三者観から一緒に悩み抜いた作品。感想は一杯ある。書き連ねられない。僕は無力で手段を持ち得ないので、少なくとも今は愛息を抱きしめて受け入れて守ってあげることしか出来ないのである。また、解説のとおり、石田氏の法律小説として、描写が新鮮で、かつ、心理描写と投写が心理と真理に迫る作品である。この手の作品が石田氏作品に連なっていることも驚き。青少年描写に長けている石田氏ならではか2017/04/09
のり
117
衝撃が強すぎる。あまりにも凄惨な生い立ち。両親からの過激な虐待。庇護するべき存在のはずが…「北斗」の安らげる時や場はどこにもない。年端もいかない子が身を守る術はない。生地獄の終焉は父親の死が境となり、児童相談所経由で里親の「綾子」との出会いで初めて人の情に触れる。やっと幸せな生活を送れるようになった矢先に…病で余命を宣告された綾子を懸命に支えた北斗。そして「波洞水」絡みで破滅の道を進む事に…里親を喪った北斗は自暴自棄になり、悲惨な事件を起こす事に…その後の裁判の心理描写が心を揺さぶる。2019/01/17
miww
111
冒頭から容赦ない虐待の描写に胸が痛む。そしてその痛みを最後まで抱いたまま読み終えた。壮絶な虐待、里親と出会って得た安息、それを失った為に道を踏み外す北斗。感情を封じ込め生きるしか術がなかった彼が、自分の本当の気持ちと向き合い葛藤する裁判の場面は圧巻。「僕はただ抱き締めて欲しかった‥お母さんに愛されたかった‥ぎゅっと抱き締めてお前が好きだと言って欲しかった‥」被害者家族に謝罪し、自分の気持ちを吐き出す北斗に号泣。彼の罪は許されないのに、最後は寄り添っている自分がいました。読んでみて下さい。2017/05/03