出版社内容情報
とある事情から弟夫婦の子、なずなを預かることになった私。独身で子育て経験のない四十半ばの私は、周囲の温かい人々に見守られながら、生後二ヶ月の赤ん坊との暮らしを始める。第23回伊藤整文学賞受賞作(解説/陣野俊史)
内容説明
新聞記者の私はやむない事情から弟夫婦の子、なずなを預かることになった。四十代半ば独身の私にとっては、生後二ヶ月の赤ん坊を相手にミルクをあげるのもおむつを替えるのも未知の体験。何気ない仕草や発声に様々な発見をしながら、ジンゴロ先生や友栄さんら周囲の温かい人々に見守られて、私はなずなとの暮らしを始める。生命の瑞々しさに溢れた育児小説。第23回伊藤整文学賞受賞作。
著者等紹介
堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年岐阜県生まれ。作家。99年『おぱらばん』で第12回三島由紀夫賞、2001年『熊の敷石』で第124回芥川龍之介賞、03年『スタンス・ドット』で第29回川端康成文学賞、04年『雪沼とその周辺』で第8回木山捷平文学賞、06年『河岸忘日抄』で第57回読売文学賞小説賞、10年『正弦曲線』で第61回読売文学賞随筆・紀行賞、12年『なずな』で第23回伊藤整文学賞、13年『振り子で言葉を探るように』で第11回毎日書評賞、同年、第66回中日文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
145
良すぎて、読むのにかえって時間がかかってしまった。読みおわるのが勿体ない、この小説世界から離れたくない、そんな気持ちで、ゆっくりゆっくり、たいせつに読んだ。小説の歩みが緩やかだったこととも関係があるのかもしれない。我が家にも昨年、子がまたひとり増え、いまちょうど「なずな」とおなじほどの月齢である。しばらく積んでいたこの本も、読むのは今しかないようにおもわれた。そしてじゅうぶんに味わうことができた。中心、ということを意識しながら読んだ。子が生まれてくるまでは⇒2025/01/12
コットン
73
ある意味、なずな(赤ちゃん)が主人公の物語。「なずなが、ちょっとだけ、身体をよじる。また、反対によじる。寝返り、という言葉が思い浮かぶ。嫌な意味にも使われる言葉がこんなにも肯定的に響くのは、赤ん坊だけに許された特権なのだろうか。」となずなを見る目がやさしい。赤ん坊がいるだけで潤滑油のように人生が豊かに感じる情景を描いていて面白い。2015/04/28
優希
61
あたたかさを感じました。やむを得ない事情から、弟夫婦の子・なずなを預かることになるのですが、そこから世界は一転したように思えます。おおらかで優しい世界に。未知の体験をまわりの人たちの優しさに支えられながらなずなと生活する「私」。みずみずしくて爽やかな読後感です。2021/07/30
KAZOO
52
作者は自分での経験があったのでしょうか?かなり0歳児の面倒見をきめ細かに描写しています。それを独特の上手な文章で書かれています。情景が浮かんでくるような気がします。あまり事件もおきないような普段の生活をうまく作品にしたものだと感心しました。2014/12/09
ユメ
43
新聞記者である「私」は、弟夫婦に非常事態が出来したため姪のなずなを預かることになる。不慣れな育児に苦戦しながらも「私」はなずなを心底愛しく思い、彼女の成長は「私」の目に映る世界に変化をもたらす。「世界の中心は、いま、《美津保》のベビーカーで眠るなずなにある」赤ん坊がこれほど求心力を持っているとは知らなかった。なずなの周りにいる人々はなずなの一挙手一投足に頬を緩め、それは読者である私も例外ではない。なずなによって大人たちの空気が和み、近くの、あるいは遠くの人と人とが緩やかに繋がってゆく光景はとても温かい。2020/02/20
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