出版社内容情報
京から大宰府に左遷され泣き暮らす道真だが、美術品の目利きの才が認められる。大宰大弐・小野の窮地を救う為、奇策に乗り出すが……。朝廷への意趣返しなるか! 書き下ろし歴史小説。(解説/縄田一男)
内容説明
右大臣だった菅原道真が大宰府へ左遷された。悲憤慷慨する彼にお相手役の保積もお手上げ。そこへ美貌の歌人恬子が現れ、博多津の唐物商へ誘う。道真は、書画骨董の目利きの才を発揮し、生気を取り戻す。その頃、朝廷に出す書類に不正が発覚し、府庁は窮地に。事態を知った道真は、自ら奇策を…。朝廷を欺き、意趣返しなるか!日本史上最も有名な左遷された男の活躍をユーモアのなかに描く歴史小説。
著者等紹介
澤田瞳子[サワダトウコ]
1977年京都府生まれ。同志社大学大学院博士前期課程修了。専門は奈良仏教史。2011年デビュー作『孤鷹の天』で第17回中山義秀文学賞を最年少で受賞。12年『満つる月の如し仏師・定朝』で第32回新田次郎文学賞と第2回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
188
左遷された菅原道真の大宰府での生活を描く。私の中で歴史上の一人物った道真公が憂い、喜び、悲しみなど様々な感情を持った一人の人間として動きだし、一気に身近な存在になった気がします。突然京から高貴な方を受け入れることになった大宰府側の面々も人間臭くて魅力的。ユーモアもありとても面白く読めました。「人は置かれた場所で生きねばならない」勇気と柔軟な心の持ち方も教えられた一冊でした。2020/08/17
あきぽん
161
太宰府に左遷された菅原道真は実は逞しくその地で生きる道を見出してた、というお話。菅原道真にまつわる伝説はそもそも太宰府に失礼だし、人間は本来もっと柔軟性のある生き物のはずだ。教科書の歴史とは違う視点で書く、面白い時代小説。2020/10/27
kk
147
澤田先生の作品、初めて読んでみました。なんというか、丁寧によく練られたお話ですね。本作は長編ですが、雰囲気的には往時の昭和文士の短編を彷彿させるものを感じました。話の流れも然るべく自然だし、基本的に優しい視線で、読んでいて心地よかったです。たまに「良い話」成分が諄くなって説教くさく感じられちゃったのがタマニキズかな。2020/01/29
yoshida
133
太宰府に配流された菅原道真。鬱々とした道真の無聊を晴らすよう、太宰府官吏の龍野保積は指示を受ける。この物語は、人生の逆風を受けている読者への応援歌だと思う。そして、一度倒れても、再び立ち上がり歩き出すことは自分自身の力と決意と示す。道真も自分の関心事に惹かれ動き出す。遂には、先右府である能力の片鱗を披瀝し快活さを取り戻す。生きていて順風満帆な人は少ないだろう。誰しも悩みや挫折がある。そこからどう生きるか。挫折が大きければ、それだけ立ち直るに時間も要す。しかし、雨は止む。空は晴れる。人生はやり直せるのだ。2021/01/17
ぶち
128
菅原道真と言えば京から大宰府に左遷させられ、怨霊として数々の祟りをもたらしたことで有名です。この小説は、そんな祟りや怨霊とは無縁で、爽やかで痛快なお話しとなっています。最初は左遷されて嘆き悲しむ道真が描かれていますが、徐々にそんな状況から抜け出し、大宰府の危機を救う活躍を見せてくれます。その奇策は朝廷への逆襲の策ともなっていて、読んでいて痛快な気持ちを味わえます。また、小野小町が大宰府で道真と親交し、その後東北に移っていったという奇抜な展開も楽しかったです。仏教絡みのエピソードも面白く読みました。2021/01/15