出版社内容情報
雪に囲まれた廃墟の塔で密室殺人が発生。殺されたのは親友の父親で、8年前に同じ塔で起きた殺人事件の容疑者として逃亡中だった。さらに三度目の殺人が…驚愕の青春本格ミステリ!(解説/巽 昌章)
内容説明
町に初雪が降った日、廃墟の塔で男が殺害された。雪の上に残された足跡は、塔に向かう一筋だけ。殺されたのは、発見者の高校生・祐今の父親だった。8年前に同じ塔で、離婚した妻を殺した疑いを持たれ、失踪していた。母も父も失った祐今を案じ、親友の烏兎と獅子丸は犯人を探し始める。そんな彼らをあざ笑うように、町では次の悲劇が起こり―。衝撃の真相が待ち受ける、青春本格ミステリ。
著者等紹介
麻耶雄嵩[マヤユタカ]
1969年三重県生まれ。京都大学在学中の91年『翼ある闇メルカトル鮎最後の事件』でデビュー。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門、第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。同書は『2011本格ミステリ・ベスト10』国内ランキングでも1位を獲得した。さらに『貴族探偵対女探偵』で『2014本格ミステリ・ベスト10』国内ランキング1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
321
今になり振り返るとこの作品は転換点。『化石少女』『さよなら神様』『友達以上探偵未満』等で継続されるフォーマットの黎明期的な物語。刊行当時はらしくない作品として語られることが多かったと記憶している。その後のコレ系統の麻耶作品群は短編集がメインで、ハイライトとなる、切れ味のあるトリックを使用した一話を置くことで、ミステリとしてバランスをとっているが、『あいにくの雨で』はミステリ部分か世界観に競り負けており、そこに物足りなさが残る。しかし、この系統がじゅうぶんな支持を得ている今になって読めば、問題なく楽しめる。2021/03/17
chiru
89
探偵役が密室の謎を解き、犯人を名指しすることをためらう『13章』から始まり、1章へ。 生徒会のスパイ探しと殺人事件の調査が並行して行われるため、全体像をつかめないまま手探りで進むうち、嫌な感触に不安感を増していく。 真相は比較的想定しやすく予想外ではなかったです。 自己欺瞞が次々に殺人を喚起し、犯人の深い孤独が痛い程に伝わって、憐れみを感じてしまう。 作風は硬質で、抑制された文章が印象に残る哀切漂うラストでした。 ★3.52018/10/10
ソラ
49
講談社で出たときも読んだはずだったけど内容全然覚えてなかった。青春ミステリっていうから甘酢っぽさのある話になるかと思ったら、なんと苦い話であることよ。2014/08/16
Yuki
42
久しぶりの再読。久しぶりすぎて高校生たちの話だったなってこと以外ほとんど忘れてたけど、曇天模様のような重々しさを感じてなかなか面白かった。20世紀末の高校3年と言ったら私と同年代だなぁと思えば、作中の登場人物の言動や生徒会諜報なんかの高2病感(高3だけど)も痛くて懐かしい。以前に「キングレオの冒険」を読んだので「獅子丸」という名前が被ってるなと思ったけど、たぶん天親獅子丸(キングレオ)の元ネタがこちらの熊野獅子丸なんだろうな、と思った。2018/12/05
ジャムうどん@アカウント移動してごはんになります
38
麻耶氏らしくないとの評価が多い作品です。初め、犯人が提示されたときはかなり悪い意味で「嘘でしょ」と思いましたが最後にもう一仕掛け、良かったー、と思ってしまいました(笑)主人公たちが通う学校が漫画ばりに凄さまじいのですが、そのあたりは(本筋には必要なのですが)個人的にはもっと短くても良かったかなと感じます。普段の麻耶さんとは確かに違いますが、つまらないわけではありませんでした。2015/05/23