出版社内容情報
大阪のデザイン事務所で働く奈加子と東京の建築会社に勤める重信。一度だけ仕事で出会った二人は、お互い32歳で同じ誕生日という事実を心の片隅に、仕事や日々の暮らしに立ち向かう。(鑑賞/益田ミリ)
内容説明
大阪のデザイン事務所で働く傍ら、副業でライターの仕事をこなす奈加子。ある日、上司の代理の打ち合わせ先で、東京の建設会社に勤める重信と出会う。共に人間関係や仕事の理不尽に振り回され、肉体にも精神にも災難がふりかかる32歳。たった一度会ったきり、しかし偶然にも名字と生年月日が同じだったことから、二人はふとした瞬間に互いを思い出す。男女のささやかな繋がりを描くお仕事小説。
著者等紹介
津村記久子[ツムラキクコ]
1978年大阪府生まれ。2005年「マンイーター」(単行本化にあたり「君は永遠にそいつらより若い」に改題)で第21回太宰治文学賞を受賞しデビュー。08年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で第30回野間文芸新人賞、同年、咲くやこの花賞、09年『ポトスライムの舟』で第140回芥川賞、11年『ワーカーズ・ダイジェスト』で第28回織田作之助賞、13年『給水塔と亀』で第39回川端康成賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
212
『ポトスライム~』『君は永遠に~』以来の津村さん作品3作目ですが、予想以上にかなり面白かったです。ワクワクはしない内容かつテンポでしたが、読むのを飽きさせない展開でしっかりと読ませてくれました。やはり表題作のなんともいえない安定したリズムの文章は、ホント落ち着きます。そして、最後の終わり方が「ええっ!」となり、先が気になって仕方ない作品も久しぶりでした。もう1作の『オノウエさん~』も非常に共感の持てる内容でした。「いるなぁ、こういうヒトたち」とうんうんとなりながら、アッという間に読了で素晴らしかったです。2014/06/29
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176
🌟🌟🌟🌟☆。2021年の俺の読書ライフの収穫のひとつが津村記久子に出会えた事。仕事を中心とした日常を綴った小説。仕事を持っていれば誰にでも起こりそうな出来事がひたすら書いてある。劇的な事は何も起こらない。主役の二人は仕事上の接点のみで交わらない。誰も死なない。最初から最後までずっと地続きな話がただひたすら書いてあるだけである。なので当然ここに書き記す程の感想も浮かばない。でも、なんか沁みるんだよね。読む人も選ぶかもしれない大人向けな小説。『オノウエさんの不在』と益田ミリの鑑賞漫画もとても良かった。2021/12/21
修一朗
129
身近なお仕事あるあるを綴る名人津村さん,これもよかった。しょっぱなから,仕事に行きたくないっ…の表現が実に巧み。生まれ生年月日が同じ二人は人生に疲弊しながらも,人間関係や自分の能力にも諦めながら折り合いを付けていかなくてはいけない,そういう二人に共感してしまう。救いの食べ物がカレーとスパカツってところもらしくて良かった。自分のご褒美は歳相応にしときます。巻末の益田ミリさん4コマ漫画には参った。こんな見事に作品を紹介しちゃうなんて,さすがです。2016/07/03
ゴンゾウ@新潮部
115
偶然から仕事で一回だけ出会った名字も生年月日も同じのふたりの男女。ふたりの日常を交互に描く。30歳を超え何と無く感じる焦りや不安。このまま流されて良いのだろうか。そんな日常が描かれている。最後に起こる奇跡の兆し。ほっとする読後感。2017/01/20
りゅう☆
111
恋人と別れ、満員電車に揺られ、女同僚に避けられ、副業はそこそこ、やたら変更を求める仕事相手にイライラし…そんなOL奈加子。大阪に異動し再び実家に住むも段ボールはそのまま、仕事を任され筒なくこなしてたのに、陰湿なクレームに対応し、スパカツの美味しさに驚き、もしかしてED?通院始めたり…そんな会社員重信。2人は同じ苗字に同じ誕生日の同い年。たった一度、仕事の打ち合わせで会っただけの2人。山あり谷ありとかじゃなく、ごく普通の生活をダイジェストで垣間見た。あまり温度差のない2人がなんかいい。距離が縮まるといいな。2020/04/27