出版社内容情報
免疫学者のアメリカ留学時代の懐かしくもほろ苦い若き日の思い出。重い病とともに生き、その中から生まれる考察、日々変化する闘病生活を綴る。珠玉の自伝的エッセイ。(解説/多田式江)
内容説明
世界的免疫学者である著者が、初の留学で住んだ1960年代のデンバー。下宿先の老夫婦との交流、ダウンタウンのバーに通って知った豊かなだけではない米国の現実。戦争花嫁だったチエコとの出会いと30年に及ぶ親交。懐かしくもほろ苦い若き日々―。回想の魔術が、青春の黄金の時を思い出させる。そして脳梗塞となって、その重い病との闘いのなかから生まれる珠玉の言葉。自伝的エッセイ。
目次
1 春楡の木陰で(春楡の木陰で;ダウンタウンに時は流れて;チエコ・飛花落葉)
2 比翼連理(比翼連理;羽化登仙の記;百舌啼けば;わが青春の小林秀雄;花に遅速あり ほか)
著者等紹介
多田富雄[タダトミオ]
1934年生まれ。東京大学名誉教授。免疫学者。95年、国際免疫学会連合会長。抑制T細胞を発見。野口英世記念医学賞等内外多数の賞を受賞。2001年、脳梗塞で倒れ声を失い、右半身不随となるが、リハビリを行いながら著作活動を続ける。能楽にも造詣が深く「望恨歌」など新作能の作者としても知られる。08年第7回小林秀雄賞受賞。10年4月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュースの素
11
免疫学で世界に知られた存在の学者。少し前に養老氏の対談本でこの人を知った。お能が趣味で対談では盛んに能の話が出て来た。若い時、米のデンバーに渡り、その時の経験を鮮やかに書いている。英語が苦手だったが下宿先の奥さんに習ったり、近所のバーに出入りして貧しい人々とも親しくなっていく。日本に帰っても何かと彼らの事を気遣い、手紙のやり取りは続く。後年、脳梗塞などで不自由な体になっても執筆や研鑽を積んだ。お勧めしたい素晴らしい本だ。2018/10/13
ウィズ
11
多田富雄先生のご冥福を心より御祈りします。2014/11/09
やせあずき
8
世界的免疫学者の著者が若い頃アメリカへ留学した頃の話、奥さんとの思い出などを綴られたエッセイ。その後半で、脳梗塞で半身不随になられてからの壮絶な人生が描かれています。三日三晩死線を彷徨い、生きて帰れば、体は麻痺して言葉も出ない、死にたいという絶望から、生きる希望を持って「これだけ生きたら、明日死んでもいい」と思えるまで精一杯生きられたところは、生かされていることの意味、生きていくことの大変さを考えさせられました。2014/07/07
OMO
1
面白さ:△ 興味:○ 読みやすさ:○ 新鮮さ:○ 文学的云々:×2021/11/11
くらーく
1
アメリカが絶頂期だった50年代から陰りを見せた頃のデンバーへの留学。この頃に留学した方々は、良い人生を送っている方が多い印象を受ける。良いもの、良い体験をすべき時期ってあるんだろう。それにしても、多田先生は好奇心旺盛だし、恐れを知らない。ハートでぶつかる情熱的な方なんだろうなあ。だからこそ、帰国しても忘れず連絡を取り、訪米すると様子を見に行く。人の上に立つ意識と行動だね。 晩年は、身体的には辛い状態だけど、それからの精神的な高まりを記されていて、助けられる人も多いんじゃないかなあ。素晴らしき人生のお手本。2019/06/15