出版社内容情報
小学生の頃から通う書道教室の先生に長い片想いをしている佳奈。先生には奥さんがいて……。春から夏へと移りゆく季節のなかで、少女の成長を繊細に紡ぎだす青春小説。(解説/佐藤すみれ〈AKB48〉)
内容説明
高校三年生の佳奈は、書道教室の先生に長い片思いをしている。けれど、先生には奥さんがいた。叶わない思いを胸に、佳奈は日々教室で文字を書く。先生が見せた、知らなかった一面。美人で天才の妹・紗英が抱える、命のリミット。書道に打ち込む同い年の津田くん。周囲の人々に背中を押されるように佳奈のなかで何かが変わってゆく―。春から夏へ、少女から大人へ。まぶしく切ない青春恋愛小説。
著者等紹介
橋本紡[ハシモトツムグ]
三重県伊勢市生まれ。’97年に第四回電撃小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
161
★★★☆☆17067 今にも壊れそうな繊細さを感じる作品でした。いつまでも読み終わりたくないと思いつつも読了。後には余韻が強く残ります。この作家さんは、偶に設定が奇想天外では?という印象もあるんですが心に深く響く作品が多いので好感もてますね。雑談を。小学校で習字の時間ありましたよね。みんなは墨汁使ってましたが、当方は硯に水を注いで固形墨をコシコシする派!薄墨にならないように一生懸命に磨って、やっと濃くなったとき「キンコンカンコン〜」一枚も書かないで終了〜みたいな感じ。墨の消費量は多いけど紙は減りませ〜ん。2017/07/19
しいたけ
120
書道教室の先生への散る儚さ前提の片恋。高校三年生とは何ともあやふやで、その瑞々しさに微かな甘い香りを掬いとる。墨をすり半紙に向かったような間合いと緊張感。感情のザラザラした面を人の肌に当てない、登場人物たちの清らかな強さ。半紙のなにも書かれていない白いところが、本の中に生きる人の細やかな心の動きを際立たせる。ぶつけても、ぶつけても、跳ね返されたその恋は、空に舞い上がり彼女の明日に降り積もる。樹に眩しい緑が生い茂る。2018/04/21
ふじさん
83
葉桜は、書道教室の先生に片思いをしている高校三年生の佳奈の物語。叶わない思いを胸に、教室で文字を書く。美人で勉強も運動も何でもできる天才肌の妹・紗英、ひた向きに書道に打ち込む同学年の津田、二人との繋がりが深まる中で、佳奈にも変化が。思春期の少女の心の揺らぎ、恋する気持ち等、男の作家が書いたとは思われないくらに繊細で丁寧に、佳奈の気持ちを描いている。物語の終盤、先生への恋心を抱き続けた佳奈が、短歌にしたためて告白するシーンはとてもロマンチックで切なく哀しい。少女から大人へと成長する女の子の青春恋愛小説。2025/06/21
さおり
81
橋本さんの文章は、なんでか泣けてしまう。泣かせどころ(があるのかは、わかんないけど)じゃない日常の描写が、なんかしらんけど心にくる。不倫系は嫌い、と思ってなかなか手を出さなかった本だけど、全然そういうのじゃなかったです。とても、良かった。2015/02/23
ユメ
72
私はこの物語をとても平静には読めなかった。途中で何度も本を閉じ、深呼吸する。妻のいる書道教室の先生に長い片思いをしている主人公の佳奈。17歳で死ぬかもしれないと言われている妹の紗英。指一本触れたら崩れ落ちてしまいそうな青春の脆さが、私を息苦しくさせる。とうに過ぎ去ったと思っていたそんな季節が、案外まだ近くにあったことに気付いたからかもしれない。佳奈は、書道をするとき必ずきちんと墨をする。そしてその青に思いを沈める。その字で心を伝える、佳奈の選んだ道がよかった。それしかない、私にもそう思わせるシーンだった。2016/01/16