出版社内容情報
突如、妹の頬に異形の顔が出現し──。果たして少女たちは化け物に打ち勝つことができるのか。ジュブナイルホラー。
【目次】
内容説明
小学5年生の佳夏は、引っ越し先で蛇に似た固有種“イビ”をじょっきんと切って軒先に吊るすという奇妙な風習に出会い面食らう。ある日の夜中、おぞましい化け物の声を聞き恐怖した佳夏が「あっちへ行って」と叫ぶと、その化け物は妹の陽菜にとり憑き…。果たして彼女たちは化け物に打ち克つことができるのか。田舎町に古くから伝わる習わしに翻弄される少年少女たちを描く恐怖の長編小説。
著者等紹介
井上宮[イノウエキュウ]
1961年愛知県生まれ。2016年「ぞぞのむこ」で第10回小説宝石新人賞を受賞。18年に受賞作をおさめた連作短編集『ぞぞのむこ』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
67
-じない、だれもしんじない…-てやれ、こらしめてやれ…-ひもじい、じい…「それでね、イビのこと、絶対にかわいそうっていっちゃダメだよ」思わず口にしてしまった少女の耳に届く不気味な囁き…-えらべ、らべ…蛇ならぬイビ、実在しそうに描かれた存在と謎めく化け物としてのイビラ…その人間への顔を侵蝕しながらの憑依ぶりが何とも生々しい…ムラ社会に感化される大人を他所に、子どもたちの護符に祈祷に必死の奮闘が導き出したせつない過去…「だれもしんじない」「こらしめてやれ」「ひもじい」はっきり聞こえる声が残すのは限りない哀愁…2025/09/29
yukaring
65
グロテスクで濃厚な闇と蛇に似た生き物「イビ」の気持悪さに怖気を震うジュブナイル×ホラー。小学生の佳夏の一家が引っ越してきた町の不気味な風習、町に生息するイビを乾燥させて軒先に吊るし厄除けにするのだと言う。また吊るされたイビの事を決して「かわいそう」と言ってはいけない。もし言ってしまうと…。思わずそう口走ってしまった佳夏へ降りかかる背筋も氷るような恐怖。イビの化物イビラに取り憑かれた妹を救うため、仲間と町の因習を調べる彼女達。追い詰められる絶望感とほんの少しの希望。子供達の痛ましい戦いに惹きこまれる一冊。2025/10/19
佐倉
21
地方に引っ越してきた佳夏が山で見つけてしまった子供の骨、イビの風習、ある言葉でやってくるイビラ。佳夏は思わず呼び寄せてしまったイビラを妹に擦り付けてしまう。それ以来、妹の様子がおかしくなっていくことに。井上宮は『ぞぞのむこ』以来だが、不条理な怪異とリアリティのある厭な学校のいじめや家族の描写が見事で精神に来る。無視される痛み、子供であるが故に真面目に聞いてもらえない、言い返せないという絶望感…誰しも少なからず経験のあるような苦しみとイビラの正体がリンクする展開は焦燥感を募らせ読む手が止まらなくさせてくる。2025/10/21
くまちゃん
18
まず蛇ダメな人は注意!田舎の村。家の軒先に吊るされる蛇の死骸や言ってはいけない言葉、奇妙な祭りなど。王道ホラーに相応しい。前作よりグロは少ないが面白かったです2025/12/09
みや
16
白い蛇に似たイビを飾る奇妙な風習のある町でイビラに憑かれた妹を救う。子供は無力だ。誰にも助けてもらえず、逃げても居場所はなく、親は信じてくれない。150年前から現在まで様々な理由で身勝手な大人に虐げられてきた子供たちの悲痛な叫びが脳内で鳴りやまなくて、私まで泣き喚きそうだった。救われてほしいと必死に願った。右頬の穴から顔を覗かせるイビラや大量に蠢くイビなど視覚のグロテスク描写も容赦ない。ずっと心が痛くて苦しいが、最後の真実で彼の強さと優しさに包まれて、初めて涙が零れた。君を信じて良かった。心を抉る絶品。2025/11/18
-
- 和書
- 中世「歌学知」の史的展開




