出版社内容情報
平成30年史とともに、それぞれの年代を生きる女性たちの友情が、バトンのようにつながっていく。唯一無二の“私たち”の物語!
内容説明
体育で誰とペアになるか悩んだ小学校時代。親友への憧れと嫉妬で傷つけ合った中学時代。うちらが最強で最高だった高校時代。女であるが故に、なし崩しに夢を諦めた大学時代。仕事に結婚にコロナに子育てに翻弄される社会人以降の日々…1990年から2020年。10歳から40歳。平成30年史を背景に、それぞれの年代を生きる女性たちの友情をバトンのようにつなぐ、かけがえのない“私たち”の物語。
著者等紹介
山内マリコ[ヤマウチマリコ]
1980年富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR‐18文学賞」で読者賞を受賞。12年『ここは退屈迎えに来て』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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エドワード
33
男性の私が言うのも無責任だが、女性は生きにくい。山内マリコさんと同じ1980年生まれの女性たちの、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人その時々の夢と悩み。20代以降は苦悩の連続だ。就職、結婚、子育て、同い年の友人が遠のいていく、この虚無感、心の裡が本当によく描かれている。「私たちが教わってきた男女平等とは、世界平和と同じくらい空疎なスローガンであり、実現とはほど遠い。」このリアリティは雑誌クラッシィの読者の心に響いたに違いない。女ともだちを作ろうと優しく呼びかける、上野千鶴子さんの解説が素晴らしい。2025/06/01
さとか
28
前半は懐かしいアーティストやキャラクターの名前が出てきて楽しかったのに、主人公が20代に突入した辺りから失速…。なんやこれ。この時代の女の子は、こんなイジイジしてないよ!コギャルでしょ⁇アムラーでしょ⁇うちらが中心に世界回ってる高校時代を過ごしてたら、こんな卑屈にはならないよ。かなり失望。もっとそういう元気な部分を読みたかった。単純な男尊女卑への批判。でもこれは時代のせいじゃない。本人たちの自覚と覚悟が足りないせい。バカにしないでほしい。2025/05/28
いちろく
26
表題どおり各短編の主登場人物二人のうち、一人が主役、もう一人が次の主役になる形式で連なる連作短編。1980年生まれの著者が過ごしてきた時代を振り返るような、1990年から2020年までの平成の期間を同年生まれの女性たちから観ていく形式の連作短編でもある。著者が見聞きしたり経験したこともモチーフなのか? と思うほど描写がリアルであり著者を通じた同時代を感じる内容でもあった。女性の著者が女性像を固定しすぎている印象も受ける分、後半に行けば行くほど共感する人は共感するし、違和を覚える人は覚えるのだろうな、とも。2025/06/13
あんこ
19
女であることの呪い、そして祈り。私が生まれ育ったのは、山内さんの小説によく出る地方都市よりもっと田舎で、文化水準も低い所だった。それでも読む度にあの空気感を思い出して苦しくなる。今回はそれに加えて、10代以降、各年代に出会った特別な女の子たち数人のこと、あの頃の会話、意味もなく「うちら最強」の時間が永遠だと信じ切っていた輝きが一気に思い出されて息ができなくなりそうだった。小説の中の彼女たちの友人関係同様、おそらくもう会うことはない。それでもあの時間は私にとって尊いものだったということを改めて感じた。2025/04/20
miu
9
小学生だった10歳から、すっかり大人になった40歳までの女性同士の友情連作短編。帯の『本当はもっと仲良くできるはずだった“わたしたち”を抱きしめたい。』という山内マリコさんの言葉が沁みる。小中高大、その時々で仲良かった女友だち。どうしたって平等ではない日本で、手を取りあって一緒に立ち向かいたかったあの子たち。この小説のあそこにもここにも、あの時のわたしがいて胸がきゅっとなる。いま小さな女の子たちの未来が生きやすい世界だといいな、と思う。2025/06/01