出版社内容情報
診療所看護婦の知子が結婚するというが、相手の母親に猛反対され……。心と体の病に真摯に向き合う医師の切なく温かい下町物語シリーズ第4弾。
内容説明
東京浅草。診療所の医師真野麟太郎は、大先生と呼ばれ慕われている。看護師の知子が、交際中の元也との結婚を決意。幼い頃親に捨てられ苦労した知子が幸せになると喜ぶ麟太郎。だが、元也の母親がある理由で結婚に猛反対だと聞いて…。お節介なご近所さんや診療所の面々の力を借り、母親の気持ちを覆そうとする大先生。婚約破棄騒動から虐待まで、患者の心と体に真摯に向き合う医師の人情物語。
著者等紹介
池永陽[イケナガヨウ]
1950年愛知県豊橋市生まれ。グラフィックデザイナーを経て、コピーライターとして活躍。98年「走るジイサン」で第11回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。2006年、『雲を斬る』で第12回中山義秀文学賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
95
シリーズ第4弾で、何気に地味にちゃんと読んできてます。二作目、三作目と流れが着マンネリモードかなと思いかけてたトキにこちらの本作はなかなか色んなコトが起きて、退屈せずに読了できました。本作の主役的立ち位置は診療所に勤める「知子」がほぼメイン。しかし、他のレギュラーキャストもしっかりと印象的な扱いになっていて安心しました。相変わらず扱うテーマがそれぞれになかなかシリアスで、時折読んでてハラハラしてしまいます。主人公「麟太郎」先生の息子「潤一」に時折イライラしてしまう場面も。続編ありきな展開でおしまいですね。2024/04/27
タイ子
86
シリーズ第4弾。浅草下町で診療所の医師・真野麟太郎、ベテラン看護師・八重子、見習看護師・知子、大学病院に勤務しながらたまに、いや毎晩のように彼女目当てに帰って来る麟太郎の息子・潤一。目当ての彼女とは過去にわけありの美少女高校生・麻世。30歳の男が高校生にお熱だなんてと思うけどこれが一途だから面白い。今作は見習看護師の知子の結婚をめぐっての紆余曲折な物語。医院に運ばれてきた秘密を抱えた一人の男の正体を巡ってそれらの全てが関わりのある出来事に発展するのが今作の読み処。「医は仁術」麟太郎医師の心意気が素敵。2024/03/25
ふじさん
81
「下町やぶさか診療所」のシリーズ4作目。知子が抱える過去の傷と結婚問題と謎めいた西垣という中年男の正体を縦軸に、麟太郎に懐く公園に居つくホームレス、浮気によって性病を移された主婦、恋煩いに悩む高校生、人殺しために心臓にナイフを上手くさせる方法を教えてくれると迫る若い女等、様々な患者との対応を横軸に展開していく。登場人物は、純一を除いて、みんなワケアリの人生を送ってきた。そして、今回は、知子の「ワケアリ」がクローズアップされ、結婚問題と絡んで物語は進んでいく。下町人情満載の展開に心が癒される。 2025/05/01
まさきち
73
シリーズ第四作。三作目では短編から長編へと転じましたが、本作ではまた短編へと戻り一安心。そして今回は冒頭で現れた謎の男・西垣と、診療所で看護師として働く知子の結婚と過去を軸に、合間にいつもながらのあたたかい人情噺が挟み込まれているといった趣で、これまたいつも通り瞳を潤ませながら読み終えた一冊でした。2024/03/19
楽駿
33
品川図書館本。今回も、温かい気持ちでいっぱいになる。苦労をしてきたからこそ、幸せになってもらいたい。その思いは、あちらもこちらも、きっと同じ。幸せになる事が、無駄を省く事なのか、共に生きる選択なのかは、その立場によって大きく変わるのだろう。どんな回り道でも、無駄な事は、きっとない。いつか、その無駄は、立派に役に立つ。そんな事を、効率化を考えるあまりに、忘れられているんだろう。回り道はあって良い。きっと、いつか、その人の役に立つ。だからこそ、幸せになって欲しい。そんな事を考えた。続きも楽しみです。2024/04/27