出版社内容情報
【第15回中央公論文芸賞受賞作】
「ママがね、ボケちゃったみたいなんだよ」妹からの電話で実家の状況を知った智代。かつて横暴だった父が、母の面倒をみているという。関わり薄くいられのも、お互いの健康あればこそだった。長男長女、墓守、責任という言葉に距離を置いてきた日々。妹は二世帯同居を考えているようだ。親孝行に名を借りた
無意識の打算はないか。家族という単位と役割を、北海道を舞台に問いかける傑作長編。
【著者略歴】
桜木紫乃(さくらぎ・しの)
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で「オール讀物」新人賞を受賞。07年に同作を収録した単行本『氷平線』を刊行。13年『ラブレス』で島清恋愛文学賞を受賞。同年、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞し、ベストセラーとなる。他の著書に『起終点駅 ターミナル』『無垢の領域』『蛇行する月』『裸の華』『緋の河』『孤蝶の城』など。
内容説明
親の終活、二世帯同居、老老介護―。大人の諦観と慈愛に満ちた傑作長編。第15回中央公論文芸賞受賞作。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞、20年『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
88
いっとき夢中で読んだ桜木小説。19作目の今作は、5人の女性の視点で「家族」を描いた連作短篇です。文句なしに面白いです。桜木小説には、やっぱり駄作がないことを改めて実感しました。子供が成人して残された夫婦の情況、心境がものの見事に描かれています。私は82歳の登美子の視点で書かれた最終章が好きです。このおばあちゃんは同い年のうえ、ボケる気配もないところに親近感を抱きました。しかし、足腰のしっかりした彼女には、健康の面で太刀打ちできないのが残念です。久々に桜木紫乃ワールドを満喫しました。2023/07/08
ゴリ人
81
桜木紫乃さん4冊目。60代半ばで、先日認知症の身内が亡くなったばかりの人間には身に沁みました。桜木さんの文章は心の隙間にスルッと入ってきて身体の何処かに澱むような感じがしました。多分今日より明日の方がこの作品ことがわかる気がします。何だか涙が出ます。2024/12/11
niisun
68
桜木氏の作品を読むのは『ラブレス』『ホテルローヤル』に続き3作目。テンポや言葉の選び方などが私ととても相性の良い作家さんです。しかし、うら寂しい北の大地を舞台に、離れようにも離れられない家族のしがらみを高湿度に描かせたらピカイチてすね。今回は主人公が同世代で、老いた親との関係性を仕舞っていく話で、身につまされる内容でした。私も農家の次男だったので、早くに家を出て、結婚と離婚などを経験する間、ほとんど実家に寄り付きませんでしたが、父が倒れて兄弟会議を開き、次男の私が実家に戻っりました。しがらみってやつです。2023/08/19
piro
60
5人の女性の視点から語られる連作短編集。其々の名前がタイトルとなった各編、紡がれる屈託や悲哀に気持ちがざわつきました。認知症を患ったサトミを軸に、二人の娘と姉の視点から語られる各編と、変化球の如く挟まれる2、4編目の構成は思わず唸りたくなる秀逸さ。長女視点の1編目は智代夫妻の少し前向きな人生の「区切り」を感じられましたが、次女・乃理視点の3編目が何とも苦しい。「終い」ではなく「仕舞い」だと言うことですが、其々の家族はどの様に仕舞われるのだろう。ざわつきが収まらないままの読後感。桜木さんならではの物語です。2023/07/29
カブ
45
家族って何だろう。結婚して家を出て、だんだん関わりが薄くなっていく長女と二世帯住宅に親と一緒に住もうとする次女。その他にも親の兄弟姉妹やその子たちの諸々。どこまでを家族というのか、自分の周りを見渡すと、他人事ではないなと感じた。2023/09/30