出版社内容情報
シルクロードを旅する一行が、数々の苦難を乗り越え辿り着いた場所。それは世界最後の桃源郷だった──。紀行エッセイ新装版完結!
内容説明
生きて帰らざる海、タクラマカン砂漠。その熱い砂上に人生を重ねながらも、やがて目前に見えてきたのは、白く輝くカラコルム山脈と、豊かで湿潤な緑だった。ついにパキスタンへ入った一行は、世界最後の桃源郷フンザの平和な黄昏に迎えられる。そして、いくつもの出会いと別れの果てに辿り着いた、旅の終着地ガンダーラ…。生と死を見つめる壮大な紀行エッセイ、ついに完結。新装版第三弾!
目次
生きて帰らざる海
群れからはぐれて
遠くの雪崩
星と花園
インダスという名の銀河
火を踏みしめる少年
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年3月6日兵庫県生まれ。77年『泥の河』で第13回太宰治賞を受賞しデビュー。78年『螢川』で第78回芥川龍之介賞、87年『優駿』で第21回吉川英治文学賞を受賞。2004年『約束の冬』で第54回芸術選奨文部科学大臣賞文学部門を、09年『骸骨ビルの庭』で第13回司馬遼太郎賞を受賞。また同年、紫綬褒章を受章。19年「流転の海」シリーズが完結し、第60回毎日芸術賞を受賞。20年旭日小綬章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
91
よくこのような過酷な旅をつづけたという気がします。最後の3巻目はヤルカンドからカシュガルへと戻りパキスタンとの国境へと赴きます。途中ではかなり険しい山道を旅していることがわかります。ここで今までいた中国人との通訳とも別れます。いままで宮本さんのほかの旅行でも同行していたようですね。これだけ劣悪な環境だと5人いると関係もぎすぎすしてくると思うのですがあまりなかったようです。結構さまざまな文学や詩の話なども出てきて楽しめました。そのうちに鳩摩羅什の話を書いてくれないでしょうか?2023/10/21
aika
41
旅はいよいよ桃源郷フンザとインダス河の轟音が響くチラスへ。満点の星空の下で精神病院で凄絶な最期を遂げた父の姿を思う著者の思いの深淵さに涙が込み上げました。パキスタンへ向かうため、フーミンちゃんたちとはお別れ。停電に見舞われながら毒蛇のような鰻を堪能したお別れ会は読んでていて笑いが止まりません。二匹の白い蝶と見まがえた、盲目の母とその手を引く物乞いの少女。著者一行が一瞬見かけただけに過ぎない彼女たちの歩く姿に胸をつかれたのは、一行が旅を通して人間の生命をユーモアを交えて見つめ続けていたからかもしれません。2023/05/18
もえ
20
6,700キロ、約40日間のシルクロードの旅の最終巻。ヤルカンドからタクラマカン砂漠を目指し、カシュガル、タシュクルガンへ。クンジュラブ峠を落石の恐怖と戦いながら進み、パキスタンのスストの国境では、フーミンちゃんとあっけなく別れる。その後辿り着いたフンザはまさに桃源郷。地上の薔薇と天空の星に癒される。旅の終盤のガンダーラで著者は体調を崩すが、なんとか全員無事に帰路に着く。鳩摩羅什の小説を書くことを断念した著者だが、人生についての思いが沢山詰まった紀行文は完成し、27年経った今も我々の心を打つ。2023/08/14
都人
3
旅行記とか紀行文を読み終えると、大抵は書かれている場所に一度は立ちたい、一度は行きたいと思う物だがそうはならなかった。著者のこの旅の動機が「鳩摩羅汁」という1600年前の訳経僧の足跡を訪ねるということで全く興味がわかなかったことと、旅の大半を占める中国に全く魅力を感じられなかったからだ。2025/04/26
9分9厘
3
最終巻。とうとう辛く長い旅も終着地、イスラマバードへ。どんな感動が、どんなドラマが待っているのかと思っていたが、なんともあっさりと終わってしまった。ページ数にすれば1ページあったのか? 長大な旅に比べなんと簡単なことか。しかし、これが旅なんだろう。かっこよく言えば人の一生もこんな感じなのかも。死ぬときのことをあれこれドラマチックに考えて見ても所詮、本一冊にして数行のことなのだ。私も一緒に旅をした感じ。2024/05/03