出版社内容情報
実家に戻った娘、他人に親身な母、音信不通の伯父……。同じ家に暮らした記憶と小さな秘密が繋ぐ、三代にわたる「家と私」の物語。
内容説明
恋人と別れ、突然実家に帰ってきた娘、梓。歳下のシングルマザーに親身になる母、祥子。三人の“崇拝者”に生活を乱される大叔母、道世。我が家と瓜二つの空き家に足繁く通う父、滋彦。何年も音信不通の伯父、博和…。そんな一族が集った祖母の法要の日。赤の他人のようにすれ違いながらも、同じ家に暮らした記憶と小さな秘密に結び合わされて―。三代にわたって紡がれる「家と私」の物語。
著者等紹介
青山七恵[アオヤマナナエ]
1983年埼玉県生まれ。2005年「窓の灯」で第42回文藝賞を受賞しデビュー。07年『ひとり日和』で第136回芥川龍之介賞、09年「かけら」で第35回川端康成文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
41
60歳になると、私の家族という言葉の内容も重層性を帯びてくる。昭和37年生まれの私が子供だった家族。祖父母や両親等に囲まれた白黒写真。祖父母も両親も亡くなり、私が年長者となり子供や婿たちが今の家族だ。移りゆく鏑木家の四世代。私と同世代の祥子の家族の、母の照の四十九日から始まる一年間を丹念に描く。向田邦子を彷彿とさせるね。祥子の二人の娘になると完全に現代だ。急激に変わった日本人の生活。近くて遠い家族。家も変わった。私の家はどこにあるのか。家にこだわらなかった照と、家にこだわる妹の道世の人生が味わい深い。2023/01/02
ゆきらぱ
31
良かった!とても。話の終わりに私も熱い湯につかり、布団に入った気分になった。最後にある、理不尽であればあるほど、人生には説得力が増す、っていうのは真実かもしれない。何より普段は理不尽な事が起こることを恐れて暮らしているがそう思えば怖くはない。ある家族の物語なのだが脇役は存在しない。皆来る日も来る日もあれこれ考えて人生を重ねてゆく。特に59歳の祥子のキャラが良かった。元体育教師で今もはきはきしているが小さい時に祖父母に預けられた過去にこだわりを持っている。色々な側面を持っていた。2023/07/21
mayu
27
「家」と切り離せない家族の連作短編集。失恋をきっかけに実家に戻ってきた梓、一児の母の姉の灯、縁も繋がりも無いシングルマザーの世話を焼く母親の祥子、無人の家に通う父。毎日訪ねてくる常連さんの相手をする叔母の道世、母の姉の純子に行方不明の兄の博和。自分にとっての「家」ってそれぞれ。母の気持ちは中々娘にはわからなかったりする何気ない日常の積み重ねは家族ってそうだよなと思わせる。実家を出たら帰っても住んでる時とは違う気持ちになるなぁと思ったり。法事から始まり、法事で終わるのが良かった。2023/02/08
ひでお
9
家、という言葉に多層的な意味が込められているように思います。住まいとしての家、血縁としての家、そして自分の心の拠り所としての家。そんないろいろな意味の家をめぐってある家族の物語が紡がれる作品です。家族のつながりは、普段の生活ではあまり意識しませんか、深く掘り下げるとやっぱりつながっているのかな、とふと思いました。2023/09/21
Fumoh
8
「家族」をテーマにした連作短編集。母親、父親、わたし、兄弟姉妹……それぞれ個性的で、一人で自分の人生を生きているようなのに、どこかで繋がっている。時々その繋がりを絶ってしまいたいと思うこともあるが、どこかでほっそりと繋がっているのを、完全に断ち切ることはできない。「家族」という形は本当にさまざまで、関係値は各家族ごとに違うだろう。中には、他人だったらとっくに縁を切っているような厄介者もいる場合もある。逃げ出したい、でも逃げられない。罵り合ったり、助け合ったり、そんな複雑な、雑多な関係を描いた。2024/07/13